
電帳法の検索要件|ファイル名だけで探せる状態に整える
「電子取引のデータは、消さずに保存するようにした。でも……『探せるようにしておく』って書いてあるやつ、あれ結局どこまでやればいいんだっけ」 フォルダにたまっていくPDFを見ながら、そう手が止まったことはありませんか。電子帳簿保存法(電帳法)の「検索要件」は、言葉だけ見るとシステムを入れないと無理そうに感じて、身構えてしまいますよね。
先に、いちばん肩の力が抜ける話をします。多くのひとり経理は、ファイル名を少しそろえるだけで検索要件を満たせます。そして会社の規模によっては、そもそも検索要件そのものが免除されることもあります。高価なソフトは、必須ではありません。
この記事では、検索要件で求められているものは何か、ひとり経理が現実的に満たすにはどうするか、そして「自分は免除に当たるかもしれない」線引きを、順番に整理します。今日で完璧にしなくて大丈夫。まずは「自社はどこまでやれば足りるのか」を一緒に見極めていきましょう。
結論:電子取引の検索要件でやることは、突き詰めると「取引年月日・取引金額・取引先」の3つで、あとから探せる状態にしておくこと。ひとり経理の現実的な満たし方は2つです。①ファイル名を日付_取引先_金額の形にそろえる(例:20260706_〇〇商事_110000.pdf)→ ②表計算ソフトで日付・取引先・金額・ファイル名の一覧(索引簿)を作る。会計ソフトの証憑保存機能を使えば、これは自動で満たせることが多いです。さらに、前々年の売上高が5,000万円以下などの場合は検索要件が免除され、ファイル名そろえも不要になります。自社がどこまで必要かは、最終的に顧問税理士や所轄税務署に確認すると安心です。
そもそも「検索要件」は、何を求めている?
むずかしい条文の言葉を、ふだんの作業に置き換えてみます。検索要件が言っているのは、要するに「税務の確認のときに、目当ての取引データをすぐ出せるようにしておいてね」ということです。
具体的に、探す手がかりとして決められているのは、次の3つだけです。
- 取引年月日(いつの取引か)
- 取引金額(いくらの取引か)
- 取引先(誰との取引か)
この3つで見つけられれば、検索要件の芯は満たせます。「消費税額で探せるように」とか「品目ごとに」といった細かい条件は求められていません。探す入口は、日付・金額・取引先の3つだけ——ここをまず押さえると、ぐっと気が楽になります。

なお、厳密には「日付や金額の範囲を指定して探せること」「2つ以上の項目を組み合わせて探せること」も要件に含まれます。ただし、ここは次の章のとおり、多くのひとり経理では満たさなくてよくなることが多い部分です。まずは「日付・取引先・金額の3つ」だけ頭に入れておけば十分です。
ひとり経理の現実的な満たし方(お金をかけない2つの型)
「システムがないと無理そう」と感じるかもしれませんが、手作業でも十分に満たせます。よく使われるのは、次の2つの型です。どちらか片方でかまいません。
型1:ファイル名を決まった形にそろえる
いちばん手軽なのが、保存するデータのファイル名を統一する方法です。形はこうします。
20260706_〇〇商事_110000.pdf
(取引年月日_取引先_金額)
日付は「20260706」のように年月日を8ケタでそろえると、並べ替えたときに時系列になって探しやすくなります。取引先は略称でかまいませんが、同じ相手はいつも同じ書き方にするのがコツです(「〇〇商事」と「〇〇商店」が混ざらないように)。この形でフォルダに保存しておけば、日付・取引先・金額のどれからでも見つけられます。
型2:表計算ソフトで索引簿を作る
もうひとつは、ExcelやGoogleスプレッドシートなどで一覧表(索引簿)を作る方法です。列は「取引年月日・取引金額・取引先・ファイル名(または保存場所)」の4つがあれば十分です。
| 取引年月日 | 取引先 | 取引金額 | ファイル名 |
|---|---|---|---|
| 2026-07-06 | 〇〇商事 | 110,000 | 20260706_marumaru.pdf |
| 2026-07-08 | △△サービス | 33,000 | 20260708_sankaku.pdf |
この一覧があれば、表計算ソフトのフィルタや並べ替えで、日付の範囲でも、取引先でも、金額でも、組み合わせでも探せます。さきほど「範囲指定」「組み合わせ」は満たさなくてよいことが多い、と書きましたが、索引簿を作っておくとそこまで含めて自然に満たせるので、より安心です。ファイル名そろえが手間に感じる人は、こちらの方が向いているかもしれません。
いちばん楽なのは、会計ソフトの証憑保存機能
もし会計ソフトを使っていて、証憑(しょうひょう)の保存機能があるなら、そこにデータを取り込むのがいちばん楽です。取り込むときに日付・金額・取引先を登録すれば、検索は自動でできることがほとんどで、改ざん防止(真実性)もまとめて満たせます。手作業のファイル名そろえや索引簿づくりから解放されるので、量が多い会社ほど恩恵が大きくなります。
「実はやらなくていい」場合がある——免除の線引き
ここが、身構えを一気にほどいてくれるところです。検索要件には、事業者の状況に応じた緩和・免除が用意されています。ひとり経理は、これに当てはまることが少なくありません。

代表的なのは、次のような場合です(いずれも、税務調査などで「データを提示・ダウンロードしてください」と求められたら応じられることが前提です)。
- 前々年(基準期間)の売上高が5,000万円以下の事業者 … 検索要件はすべて免除されます。中小企業のひとり経理は、ここに当てはまることが多いです。
- データを印刷した書面を、取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている場合 … こちらも検索要件はすべて免除されます。日付・取引先で分けてファイリングしておくイメージです。
つまり、免除に当たるなら、ファイル名そろえも索引簿も必須ではありません(ただしデータ自体は消さずに保存し、求められたら出せるようにしておく必要はあります)。「うちは5,000万円もいってないな」という会社は、ここで少し肩の荷が下りるはずです。
一方で、免除に当たらない場合や、当たるか自信が持てない場合は、ファイル名そろえだけでもやっておくと確実です。手間はほとんどかからないので、「迷ったらやっておく」で損はありません。自社が免除に当たるかどうかの最終判断は、顧問税理士や所轄税務署に確認すると安心です。
よくある「これはどうする?」を整理
手を動かすと出てくる、細かい迷いどころをいくつか。
- 日付は「取引日」?「受け取った日」? … 原則は請求書などに書かれた取引年月日(発行日)でそろえます。索引簿でもファイル名でも、基準をひとつに決めて統一するのが大切です。
- 同じ月に同じ取引先から2枚来たら? … ファイル名の末尾に枝番を付けます(例:
20260706_〇〇商事_110000_1.pdf)。金額が違えば自然と区別できます。 - 金額はどれを書く? … 迷ったら税込の合計金額でそろえると分かりやすいです。ここも社内で基準を統一しておきます。
- フォルダ分けは必要? … 必須ではありません。ただ「年ごと」「月ごと」にフォルダを分けておくと、あとで探すときも保存年数の管理もしやすくなります。
完璧なルールを最初から作ろうとしなくて大丈夫です。「日付・取引先・金額の3つで探せればいい」という芯さえ外さなければ、細かいやり方は自社のやりやすい形で決めてかまいません。
チェックリスト(手が止まったら上から確認)
検索要件で、ひとり経理がとくに迷いやすいところを集めました。全部を今日いっぺんに満たす必要はありません。まず「自社は免除に当たるか」から確認すれば十分です。
まず確認(免除に当たるか)
- 前々年の売上高が5,000万円以下か(当てはまれば検索要件は免除)
- または、印刷した書面を日付・取引先ごとに整理して出せるか(当てはまれば免除)
対応するなら(最低ライン)
- ファイル名を
日付_取引先_金額の形にそろえているか - 日付は年月日8ケタ、取引先は同じ相手を同じ表記でそろえているか
あるとより安心
- 表計算ソフトで「日付・取引先・金額・ファイル名」の索引簿を作っているか
- 会計ソフトの証憑保存機能を使えないか一度確認したか
- 自社が免除に当たるか迷う点を、税理士に確認できているか
明日やること(まず1つだけ)
検索要件を、明日いっぺんに整える必要はありません。 明日やることは、「前々年の売上高が5,000万円以下だったかを1つ確認する」——これだけで十分です。
もし5,000万円以下なら、検索要件は免除される可能性が高く、ファイル名そろえに身構えなくてよくなります。5,000万円を超えている、または分からないときは、次に届いた電子取引のデータを1件だけ 日付_取引先_金額 の名前で保存してみてください。1件できれば、あとは同じことを繰り返すだけです。
最後に

「検索要件」という言葉だけ見ると、専用のシステムがないと満たせないように感じて、身構えてしまいますよね。でも実際は、探す手がかりは日付・取引先・金額の3つだけ。ファイル名を少しそろえるか、そもそも免除に当たるかを確かめるか——やることは、思っていたよりずっと小さいはずです。
これは「一発で完璧な仕組みを作る試験」ではありません。まず自社が免除に当たるかを確かめる。当たらなければ、次の1件からファイル名をそろえる。それだけで、あとで慌てて探す不安は確実に減っていきます。 今日、「検索要件は3つで探せればいい」「免除もある」という地図が頭に入ったなら、それはもう「なんとなく不安」が「順番に対応できる」に変わり始めた証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日できたところまでで、十分前に進んでいます。
本記事は一般的な実務情報です。電子帳簿保存法の検索要件・緩和・免除の取扱いは、個別の事情や最新の制度・通達によって異なります。最終的な判断は国税庁の電子帳簿保存法に関する情報や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
よければ、こちらも
電子取引のデータ保存そのものを最初から整えたいときは電子取引データの保存|結局なにをすればいいかを整理する、探しやすいファイリングのしかたは証憑の整理・ファイリング|あとで一発で探せる仕組み、紙の書類をデータ化したいときはスキャナ保存の始め方|要件と社内ルールをやさしく整理もどうぞ。ほかの手順は記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。