
借入金の返済仕訳|元金と利息を正しく分けるコツ
毎月きまった日に、通帳から借入金の返済が引き落とされる。金額はいつも同じ。だから、つい「借入金 ○○円 / 普通預金 ○○円」と、返済額まるごとを借入金の減少で処理してしまう——ひとりで経理を回していると、この処理に「あれ、これで合ってるのかな」と一度は立ち止まりますよね。
逆に、「返済=経費」と考えて、全額を支払利息にしてしまうケースもあります。どちらも気持ちは分かるのですが、実はあの一回の引き落としの中には、性質のちがう2つのお金が混ざっています。ここを分けずに処理すると、借入金の残高も、その月の利益も、少しずつズレていってしまいます。
でも、大丈夫です。分け方の軸はとてもシンプルで、判断材料は銀行が送ってくれる「返済予定表」1枚にほぼ載っています。この記事では、なぜ分ける必要があるのかから、具体的な仕訳、元利均等・元金均等の違い、保証料の扱いまで、迷わず手が動くように一緒に整理していきます。
結論:毎月の返済額は、「元金(がんきん)」と「利息」に分けて記帳します。①元金部分は借りたお金そのものを返す分なので「借入金(負債)の減少」、②利息部分は借りている対価=費用なので「支払利息」で処理します。③貸方は引き落とされた返済総額。内訳は銀行の返済予定表(返済明細)を見れば毎回の元金・利息が分かります。なお利息には消費税がかかりません(非課税)。返済予定表が手元にあれば、あとはこの型に当てはめるだけです。最終的な判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
なぜ「元金」と「利息」を分けるのか
まず、ここだけ腹落ちすれば、あとの仕訳はぜんぶ素直に入ってきます。
借入金の返済には、性質のちがう2つのお金が入っています。
- 元金:借りた金額そのものを返す部分。これは会社の借金が減るということなので、帳簿では「借入金(負債)」を減らします。費用ではありません(お金は出ていきますが、利益には関係しません)。
- 利息:お金を借りたことへの対価。こちらはその月のコストなので、「支払利息」という費用になります。
つまり、同じ引き落としでも、元金は「負債の返済」、利息は「費用」と、行き先がまったく別なのです。ここを混ぜてしまうと、こんなズレが起きます。
- 全額を借入金で消してしまうと、本当は費用にすべき利息が計上されず、その分だけ利益が多く見えてしまいます。借入金残高も、実際より減りが早くなります。
- 全額を支払利息にしてしまうと、借金がまったく減っていないことになり、借入金残高が返済しても減らないという、おかしな帳簿になります。
どちらも、月次や決算のときに「あれ、銀行の残高証明と合わない」となって、原因探しに時間を取られる原因になります。だから最初に分けておくのがいちばん楽なのです。
内訳は「返済予定表」を見れば分かる
「元金と利息を分けるって言われても、いくらずつか分からない」——そう思ったかもしれません。でも、これは自分で計算する必要はありません。
融資を受けたとき、銀行や信用金庫から「返済予定表」(返済明細表・償還予定表などと呼びます)が渡されているはずです。そこには、毎回の返済について「返済額」「うち元金」「うち利息」「返済後の残高」が一覧で載っています。毎月の仕訳は、その月の行を見て、元金の数字と利息の数字をそのまま拾うだけです。

もし返済予定表が見当たらないときは、取引先の金融機関に頼めば再発行してもらえます。ネットバンキングの融資メニューから内訳を確認できることもあります。「毎回の元金と利息の内訳が分かる資料」を1つ手元に置く——これが、この処理でいちばん大事な準備です。
基本の仕訳:元金と利息を分けて記帳する
では、実際の仕訳を見てみましょう。金額は一例です。
例:毎月の返済額100,000円が引き落とされた。返済予定表を見ると、うち元金80,000円・利息20,000円だった。
| 借方(左) | 貸方(右) |
|---|---|
| 借入金 80,000 | 普通預金 100,000 |
| 支払利息 20,000 |
ポイントを整理します。
- 借方の「借入金 80,000」:元金部分。これで借入金(負債)が8万円減ります。
- 借方の「支払利息 20,000」:利息部分。その月の費用になります。
- 貸方の「普通預金 100,000」:実際に引き落とされた総額。借方の合計(80,000+20,000)と一致します。
摘要には「○○銀行 証書貸付 第△回返済(元金80,000・利息20,000)」のように、どの借入の何回目かを残しておくと、あとで残高を照合するときに一気に楽になります。返済予定表の回数と摘要がそろっていれば、決算前の確認もスムーズです。
利息に消費税はかかりません。 借入金の利息(利子)は消費税の非課税取引です。そのため支払利息の税区分は「非課税仕入れ」または「対象外」にしておきます。ここを誤って課税仕入れにすると、消費税を余分に控除する誤りにつながるので注意しましょう(迷ったら会計ソフトの既定の税区分を確認してください)。
「元利均等」と「元金均等」で、毎月の内訳は変わる
返済予定表を見ていると、月によって元金と利息の金額が動いていることがあります。これは返済方式によるもので、大きく2つあります。仕訳のやり方自体は同じ(元金と利息に分けるだけ)ですが、知っておくと数字の動きに納得できます。
- 元利均等返済:毎月の返済額(元金+利息)が一定になる方式。中小企業の借入で多いタイプです。返済総額は毎回同じでも、内訳は少しずつ変化します。最初のうちは利息の割合が大きく、返済が進むほど元金の割合が増えていきます。だから「返済額は同じなのに、支払利息が毎月ちょっとずつ減っている」ことになります。
- 元金均等返済:毎月返す元金が一定の方式。利息は残っている借入残高に対してかかるので、残高が減るほど利息も減り、毎月の返済総額が少しずつ小さくなっていきます。
どちらの方式でも、やることは変わりません。その月の返済予定表の行を見て、元金と利息をそのまま拾う——これだけです。「今月は元金が多いな」と思ったら、それは方式による自然な変化なので、心配いりません。返済予定表の数字を信じて大丈夫です。
借入時・保証料の仕訳も、ついでに押さえる
返済の前後で迷いやすい、2つの場面も見ておきましょう。
借り入れたとき
融資が実行されて口座にお金が入ったときは、シンプルです。
(借方)普通預金 5,000,000 / (貸方)借入金 5,000,000
摘要:○○銀行 証書貸付 実行
このとき、事務手数料や収入印紙代などが差し引かれて入金されることがあります。その場合は、差し引かれた分を「支払手数料」「租税公課(印紙)」などで別に計上し、実際に入金された額を普通預金にします。
信用保証料を払ったとき
信用保証協会の保証をつけて借りた場合、信用保証料をまとめて前払いすることがあります。これは借入期間ぜんぶに対応する費用を先に払う形なので、払った年に全額を費用にせず、期間に応じて分けて費用にするのが原則です。
(保証料をまとめて支払ったとき)
(借方)前払費用(または長期前払費用) 120,000 / (貸方)普通預金 120,000
摘要:○○信用保証協会 保証料(借入期間◯年分)
(毎月または決算で、その期間分を費用へ振り替え)
(借方)支払手数料(または支払利息・雑費など) / (貸方)前払費用
1年を超える期間に対応する分は「長期前払費用」で持ち、当期に対応する分だけを費用にします。科目の呼び方は会社によって差がありますが、大事なのは「払った月に全部を費用にしない」という考え方です。ここは判断が分かれることもあるので、自社の処理をどうそろえるかは顧問税理士に一度確認しておくと安心です。
決算で気にしたい「1年以内に返す分」
もう一段くわしい話ですが、決算のときには、借入金を「1年以内に返す分」と「1年を超えて返す分」に分けるという整理があります(ワンイヤールール)。長期借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に返済期限が来る分を「1年内返済長期借入金」などに振り替える処理です。
毎月の記帳ではここまで意識しなくて大丈夫ですが、決算のときに一度だけ、返済予定表を見て翌1年分の元金がいくらかを確認する——それだけ頭の隅に置いておけば十分です。実際の振替は、顧問税理士と一緒に決算整理で行うことが多いところなので、「そういう整理がある」とだけ知っておけば、決算資料を見たときに慌てずにすみます。決算整理仕訳の全体像は決算整理仕訳の総点検もあわせてどうぞ。
借入金の返済仕訳チェックリスト(コピーして使えます)
毎月の返済を記帳するとき、上から順に確認してみてください。全部を一度に完璧にしなくて大丈夫です。
- 最低ライン(まずここだけ)
- 返済予定表(返済明細)を手元に用意した
- その月の「元金」と「利息」の金額を予定表から拾った
- 返済額を全額「借入金」だけ、または全額「支払利息」だけにしていない
- 仕訳の中身
- 元金部分を「借入金(負債の減少)」で処理した
- 利息部分を「支払利息(費用)」で処理した
- 貸方の総額が、借方の元金+利息と一致している
- 支払利息の税区分を「非課税/対象外」にした(課税仕入れにしない)
- あわせて確認
- 摘要に「どの借入・何回目」かを残した
- 保証料を前払いしたら、払った月に全額費用にせず期間で分けた
- 決算では翌1年分の元金を確認した(1年内返済分の振替)
- 迷ったとき
- 科目や税区分の判断に迷う点は、証跡を残して顧問税理士・所轄税務署に確認した
明日やること(まず1つだけ)
明日は、返済予定表を1枚、手元に出してくることだけで十分です。今まで「借入金 / 普通預金」でまとめて処理していたとしても、責める必要はまったくありません。多くの人が最初はそうしています。
予定表さえ見つかれば、そこに毎月の元金と利息がきれいに並んでいます。次の返済からは、その月の行を見て「元金はここ、利息はここ」と2つに分けるだけ。過去の分をさかのぼって直すかどうかは、顧問税理士に相談してからで大丈夫です。まずは「内訳が分かる資料を手元に置く」——この一歩からで、十分に前へ進めます。
最後に
借入金の返済は、毎月きまってやってくる地味な処理です。金額が同じだからこそ、つい深く考えずに流してしまいがちで、「本当にこれで合っているのかな」と心のどこかで引っかかりながら続けてきた方も多いと思います。

でも、いちど「元金は借入金を減らす、利息は費用にする、内訳は返済予定表を見る」という軸を持てば、次からは予定表の行を見た瞬間に手が動くようになります。同じ引き落としが、もう迷いのタネではなくなります。今日ひとつ、元金と利息を分ける考え方が自分のものになったなら、それはもう十分な前進です。完璧でなくて大丈夫。今日できたところまでで、ちゃんと進んでいます。
本記事は一般的な実務情報です。借入金の科目の使い方や保証料・税区分の取扱いは、会社ごとの会計方針や個別の事情によって異なります。消費税や税務上の取扱いを含む最終的な判断は、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
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