小さな事務所のデスクで、通帳とノートパソコンのエクセルを見比べながら、来月の入金と支払いを資金繰り表に書き込んでいるひとり経理の担当者

資金繰り表の作り方|エクセルで作るシンプルな入出金管理の型

来月の支払いを思い浮かべて通帳を開くと、「全部払ったら、いくら残るんだっけ」と落ち着かない——そんな不安をやわらげるのが、資金繰り表です。やることはシンプルで、エクセル(やGoogleスプレッドシート)があれば今日から作れます。完璧を目指さず、「来月、お金が足りるか」を見える化する1枚から始めましょう。

結論:資金繰り表は、①前月繰越(月初の現預金残高)→ ②収入(入ってくるお金)→ ③支出(出ていくお金)→ ④翌月繰越(①+②−③)の4ブロックを縦に並べ、月を横に並べるだけで作れます。利益を見る損益計算とは別物で、見るのは「実際にお金が動くタイミングと残高」です。まずは数か月先まで残高がマイナスにならないかを確認できれば十分。なお、資金調達や税務の判断に迷う点は、顧問税理士や取引金融機関にご相談ください。

資金繰り表は「利益」ではなく「お金の動き」を見る表

資金繰り表は、儲け(利益)ではなく、実際に現金・預金が動くタイミングと残高を見る表です。100万円の売上を計上しても入金が翌々月なら、その間にお金は増えません。逆に利益が出ていても支払いが先に集中すれば一時的に足りなくなる——いわゆる「黒字なのにお金が足りない」。資金繰り表で見るのは、「いつ、いくら入って、いつ、いくら出て、月末にいくら残るか」だけです。

まずは4つのブロックだけ作る

資金繰り表の基本構造を、前月繰越・収入・支出・翌月繰越の4ブロックに分けて縦に並べた図
資金繰り表はこの4ブロックだけ。前月繰越に収入を足し、支出を引くと、そのまま翌月繰越(=次の月の前月繰越)になる

縦に項目、横に月を並べて、次の4ブロックだけ置けば形になります。

  1. 前月繰越:その月初にある現預金残高
  2. 収入:その月に入るお金(売掛入金、現金売上、借入など)
  3. 支出:その月に出るお金(仕入・経費、給与、税金、返済など)
  4. 翌月繰越:前月繰越+収入−支出(=次月の前月繰越)

収入・支出は、よく動くものだけ行を分けると原因が追いやすくなります。会社に関係ない行は入れなくてOK。まとまった金額があるなら行を足しましょう。

エクセルでの作り方(5ステップ)

難しい関数は不要。足し算と引き算だけで回ります。

ステップ1:横軸に月を並べる

1行目に「項目/4月/5月/6月…」。最初は3か月で十分(先を見すぎると埋める負荷が上がります)。

ステップ2:縦軸に4ブロックを置く

A列に「前月繰越」「(収入)売掛入金/現金・カード入金/その他入金/収入合計」「(支出)仕入・外注/給与/社会保険・源泉/固定費/税金/借入返済/支出合計」「翌月繰越」。合計行は薄色にして入力行と区別。

ステップ3:計算式を3か所だけ

(4月をC列の例)

翌月繰越を次月の前月繰越にリンク(例:5月の前月繰越D2に= C15)。右へコピーで一気に連動。

行を足しても合計が狂わない作りにするには、

のいずれかを採用。行追加後は合計範囲がズレていないかだけ確認。

ステップ4:最初の「前月繰越」に実残高

一番左の月だけは実際の残高(現金+全口座の合計、月初時点)を入れます。ここがスタート地点。

ステップ5:分かっている予定を入れる

未確定の金額はゼロで入れ、備考に「要確定」と書いておき、確定後に差し替えます。

テンプレート(Excel/スプレッドシート)

そのまま使えるサンプル(4ブロック・数式・色分け・危険水準の条件付き書式入り)。

危険水準(最低運転資金)を決め、赤信号を自動表示

「どこまで残高が減ると危ないか」を先に決めておくと、判断が速くなります。目安の例:

シート上に「危険水準」のセルを1つ用意(例:B1に金額)。翌月繰越セルに「翌月繰越 < 危険水準」で赤くなる条件付き書式を設定します。これで下回った月が自動で赤表示になります。自社の状況に合わせて金額は見直してください。

当座貸越やコミットメントラインがある場合は、

と、資金余力が把握しやすくなります。

運用ルール(最小の手間で回す)

残高が苦しい月が見えたら

早く見えた分だけ、落ち着いて手が打てます。

試し方の例として、入金遅延シナリオ(売掛の一定割合を翌月回し)を1行追加してみると、耐性が見えます。目的は完璧な予測ではなく「驚かないこと」です。

税金の入力について(支払月の考え方)

主な税・保険関連の支払は、支払月にだけ入力します。例:消費税、法人税等、予定納税、償却資産税、住民税の特別徴収など。支払時期は決算期や申告方式・自治体で異なります。過去の納付実績と手元の納付書・通知で自社の支払月を整理し、公式情報で確認のうえ表に反映してください。

資金繰り表づくりチェックリスト

負荷をかけすぎない最低ラインと、時間があればやる項目、代替・免除を分けます。

最低ライン(必須)

任意(時間があれば)

代替/免除

例外運用

注意

明日やること(まず1つだけ)

今月と来月の2か月分だけ、ざっくり埋めてみてください。スタートの残高、入りそうなお金、出ていくお金——それだけで来月末の見込み残高が出て、「なんとなくの不安」が「見える数字」に変わります。続きの月は、手が空いたときに足せば大丈夫。

最後に

お金が足りるかどうかを頭の中だけで転がし続けるのは消耗します。表に出してしまえば、あとは毎月入れ替えるだけです。今日、来月末の残高が1つ見えたなら、もう一歩前進できています。完璧でなくて大丈夫。回る形で続けられることがいちばんの近道です。

資金繰り表を作り終えて、窓の外の景色を見ながら少し肩の力が抜けたひとり経理の担当者

資金繰り表は、一度作ってしまえば、あとは毎月数字を入れ替えるだけで使い続けられます。今日、来月末の残高が1つ見えたなら、それはもう「お金の不安をひとりで抱える」状態から一歩抜け出せています。まずは2か月分、見えただけで十分前に進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。税務・会計の取扱いや資金調達の判断は、個別の事情や最新の制度によって異なります。最終的な判断は、顧問税理士・取引金融機関・所轄税務署にご確認ください。

入金や支払いの管理をもう少し整えたいときは、請求書の発行から入金確認までの基本フローひとり経理の月次決算チェックリストもあわせてどうぞ。ほかの実務の手順も、記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。

関連用語