書庫に積み上がった年度ごとの書類箱を前に、古い年度をそろそろ捨てていいものか少し迷っているひとり経理の担当者

帳簿・書類の保存期間|いつまで置いて、いつ捨てるかの決め方

書庫の棚が、いつのまにか段ボールでいっぱいになっている。新しい年度の箱を置く場所がなくて、床に積むしかない。「そろそろ古いのを捨てたいな」と思って一番下の箱を引っぱり出したものの、蓋を開けたところで手が止まる——「もし、あとで税務署に聞かれたらどうしよう」。

ひとりで経理を回していると、この判断を相談できる相手がいないのがつらいところですよね。捨てて困るのは自分。だからつい「まあ、置いておくか」と箱を戻して、また来年も同じ気持ちで同じ箱を眺めることになる。その繰り返し、よくわかります。

大丈夫です。保存期間は、感覚ではなくルールで決まっているものなので、一度整理してしまえば毎年迷わなくなります。この記事では、法人の帳簿・証憑を何年置けばいいのか、数え始めるのはいつからなのか、そして「毎年ここまで捨てる」を機械的に回すための箱の作り方まで、順番に一緒に見ていきましょう。

結論:ひとり経理の実務では、次の3つで回せば十分です。①法人の帳簿・決算書類・証憑は原則7年、赤字(欠損金)が出た事業年度は10年。②ただし会社法は会計帳簿・計算書類に10年を求めているので、迷ったら「法人は全部10年」でそろえるのがいちばんラク。③そして数え始めるのは決算日ではなく、確定申告書の提出期限の翌日から。だから3月決算なら、実質「決算日から7年2か月」ほど置く計算になります。まず今日は、いちばん古い箱の背に「◯年◯月まで保管」と書き足すところから。なお期間は書類の種類や事業形態で変わるため、実際に捨てる前には国税庁の一次情報か顧問税理士に確認すると安心です。

なぜ「捨てていいか」がこんなに迷うのか

保存期間で手が止まるのは、整理が下手だからでも、知識が足りないからでもありません。迷って当然の理由が、ちゃんと3つあります。

裏を返せば、「いちばん長い年数に合わせる」「起算日を1回だけ正しく理解する」「箱に廃棄予定を書いておく」の3つで、この迷いはほとんど消せます。ひとつずつ見ていきましょう。

法人の保存期間の全体像(まずここだけ)

法人が保存する主な書類と、その期間の目安をまとめると次のようになります。

書類の種類主な根拠保存期間の目安
帳簿(総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛帳・固定資産台帳など)法人税法原則7年(下記の欠損金がある事業年度は10年)
決算関係書類(貸借対照表・損益計算書・棚卸表など)法人税法原則7年(同上)
証憑(請求書・領収書・納品書・契約書・注文書・見積書など)法人税法原則7年(同上)
会計帳簿および事業に関する重要な資料会社法10年
計算書類および附属明細書会社法10年
消費税の仕入税額控除にかかる帳簿・請求書等消費税法7年(一定期間を過ぎるといずれか一方でよい取扱いあり)

ここで押さえておきたいのが、「10年」になるケースです。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(税務上の赤字)が生じた事業年度の帳簿書類は、保存期間が10年になります。繰越欠損金は最長10年繰り越して使えるため、その計算の根拠を確認できるように、書類も同じ期間残しておく必要がある、という考え方です。繰越欠損金そのものの仕組みは繰越欠損金の基本|赤字を10年繰り越す条件と別表七での残高管理にまとめています。

そして会社法は、会計帳簿と計算書類について10年の保存を求めています。つまり法人の場合、結局どこかで10年が出てくるわけです。

だから実務上のおすすめは、こうです。

法人は「全部10年」でそろえる。

書類ごとに7年と10年を仕分けするのは、それ自体が手間ですし、仕分けを間違えるリスクもあります。ひとり経理なら、年度ごとに箱をまとめて「10年経ったら箱ごと捨てる」と決めてしまったほうが、判断の回数が減ってずっとラクです。保管スペースがどうしても足りないときだけ、書類の種類ごとに個別で判断すれば十分です。

数え始めるのは「決算日」ではありません

保存期間を数え始める日が決算日ではなく確定申告書の提出期限の翌日であることを、左から右へ並べた3つの場面で示した図
数え始めるのは決算日ではなく、申告期限の翌日。3月決算なら実質「決算日から7年2か月」ほど

ここが、実務でいちばん間違えやすいところです。

法人税法での保存期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から数えます。決算日からではありません。

たとえば3月31日決算の会社なら、

というスケジュールになります。感覚でいうと、決算日から数えて7年2か月ほど。「7年経ったから」と決算日から数えて処分すると、2か月分だけ早く捨ててしまうことになります。

この2か月のズレは、年度をまたぐときに効いてきます。だからこそ、箱に「いつまで置くか」を書いておくのがおすすめです。「2026年度」とだけ書くのではなく、「2026年度(2037年5月まで保管)」のように、廃棄していい時期そのものを書いてしまう。そうすれば、来年のあなたは計算しなくてよくなります。

(3月決算の2026年度なら、決算日は2027年3月31日、申告期限は2027年5月31日。起算日はその翌日の6月1日なので、7年なら2034年5月31日まで、10年でそろえるなら2037年5月31日まで、が保存期間です。)

なお、申告期限の延長(申告期限の延長の特例の適用を受けている場合など)があると起算日も後ろにずれます。自社の申告期限がいつなのかは、経理の年間スケジュール|1枚にまとめて先回りする作り方で年間の流れとあわせて確認しておくと安心です。

給与・労務の書類は、少し別の物差しで

同じ書庫に入っていても、給与や労務まわりの書類は税法とは別の法律が関わってきます。ここだけは分けて考えておくと安全です。

給与関係は、退職者から「あの年の源泉徴収票を再発行してほしい」と連絡が来ることもある領域です。税法側の7年に合わせて置いておくと、結果的にどの場面でも困りません。ここも「年度ごとの箱」に一緒に入れてしまうのが、いちばん手間がかかりません。

データで持っている書類は、どう数えて、どう捨てるか

紙だけでなく、データで受け取った請求書・領収書も増えています。ここで大事なのは、保存期間の考え方は紙と同じだということです。データだから短くていい、ということはありません。

データは場所を取らないので、正直なところ「無理に消さない」という選択も十分にありです。捨てる判断でいちばん安全なのは、迷っているうちは残しておくこと。スペースに困っていないなら、そのままでかまいません。

実際に捨てるときの手順

保存期間を過ぎた箱を処分するときは、次の順で進めると安心です。

  1. 箱の中身を最後に一度だけ確認する:契約書など、保存期間とは別に「契約が続いている限り必要な書類」が紛れていないかを見ます。取引が今も続いている取引先の基本契約書は、古くても残しておきたい書類です。
  2. その年度が「10年組」でないかを確認する:欠損金が出た事業年度は10年。決算書の当期純損益や別表七を見れば判断できます。迷ったら残す。
  3. 税務調査の予定がないかを確認する:調査の連絡が来ている、あるいは直近で予定がある時期は、処分を止めておきます。日ごろの備え方は税務調査の準備|日ごろ整える書類と連絡が来てからの段取りにまとめています。
  4. 顧問税理士に一言だけ確認する:「◯年度の箱を処分してよいか」と聞くだけで数分です。ひとりで抱えず、確認できる相手には確認しておきましょう。
  5. 機密文書として処分する:取引先名・金額・従業員の個人情報が入っています。一般ごみではなく、シュレッダーか溶解処理サービスを使います。
  6. 廃棄した記録を1行残す:「2026-08-14/2015年度分 一式/溶解処理」程度で十分。あとで「あの年度の書類は?」と聞かれたときに、探し回らずに答えられます。

この6ステップを一度作ってしまえば、来年からは箱の背に書いた年月を見て、上から順になぞるだけです。

帳簿・書類の保存と廃棄のチェックリスト

全部を今日やる必要はありません。上から順に、できるところだけで大丈夫です。

明日やること(まず1つだけ)

書庫でいちばん古い箱を1つ選んで、背に「◯年◯月まで保管」と書き足す。それだけです。

計算は簡単です。申告期限の月(3月決算なら5月)に、7年(または10年)を足すだけ。その月の末日までが保存期間になります。3月決算の2016年度(決算日2017年3月31日・申告期限2017年5月31日)なら、7年で「2024年5月まで保管」、10年でそろえるなら「2027年5月まで保管」といった具合です。

1箱書けたら、その勢いで隣の箱も。全部の箱に廃棄時期が書かれた日から、「捨てていいか迷う時間」はあなたの仕事から消えます。

最後に

年度ごとに整理し直した書類箱が棚にきちんと並び、書庫の床が片づいて肩の力が抜けたひとり経理の担当者

書類を捨てられずに溜め込んでしまうのは、慎重さの表れです。「万が一のときに困るのは自分だ」とわかっているから、手が止まる。それは、責任を持って仕事をしている人の反応だと思います。

やることの芯は、そんなに多くありません。数え始めるのは申告期限の翌日。迷ったら10年でそろえる。そして、箱に廃棄時期を書いておく。 この3つを一度やってしまえば、来年のあなたは箱の背を見るだけで判断できます。

今日、いちばん古い箱に一行書き足せたなら、それはもう「毎年迷う仕事」をひとつ減らせたということです。書庫の床が空くのは、そのあとで十分間に合います。

本記事は一般的な実務情報です。帳簿書類の保存期間や起算日、廃棄の可否は、事業形態・書類の種類・申告の状況によって取扱いが異なります。制度は改正される場合があるため、最新の取扱いは国税庁・e-Govの一次情報を確認し、最終的な判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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そもそも探しやすい形にしておく工夫は証憑の整理・ファイリング|あとで一発で探せる仕組みの作り方に、受け取ったインボイスの確認と保存は受け取ったインボイスの確認と保存|チェックと整理の手順にまとめています。決算前にそろえる資料は税理士に決算を頼む前に|社内でそろえる資料の準備リストも、ほかの経理まわりの手順とあわせて記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。

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