
適格請求書の記載事項6つ|自社の請求書を見直すチェック
「インボイスの登録番号は取った。取引先にも知らせた。……でも、自社が出している請求書そのものは、ちゃんとインボイス(適格請求書)の形になっているんだっけ?」。
登録番号を取得したところで一段落した気になって、肝心の「請求書のフォーマットそのもの」の見直しは後回しになりがちですよね。取引先から「御社の請求書、消費税額の記載がなくて仕入税額控除に使いにくいのですが」と言われて初めて気づいた——そんな話も、ひとりで経理を回している現場ではめずらしくありません。
でも、ここで手が止まるのは、あなたの確認不足のせいではありません。適格請求書の記載事項は、それまでの請求書に「登録番号」「税率ごとの区分」「税率ごとの消費税額」の3つが足されたもので、パッと見は同じでも、抜けやすいポイントが決まっているのです。この記事では、必要な6項目を一つずつ確かめ、自社の請求書フォーマットをそのまま点検できるように整理します。今日は「6つのうち、どれが足りていないか」を見つけるだけで十分です。
結論:適格請求書に必要な記載事項は次の6つです。①発行者の氏名・名称と登録番号(T+13桁)、②取引年月日、③取引内容(軽減税率〈8%〉対象なら「その旨」も)、④税率ごとに区分した合計額(税抜または税込)と適用税率、⑤税率ごとの消費税額等、⑥受け取る相手の氏名・名称。従来の請求書に「登録番号」「税率ごとの区分」「税率ごとの消費税額」が足された、と押さえると見直しやすくなります。書き方や端数処理の細部で迷うときは、国税庁のインボイス特設サイトや顧問税理士に確認しましょう。
なぜ「記載事項」まで見直す必要があるの?(10秒でつかむ)
細かい項目に入る前に、目的だけ押さえておきましょう。ここが分かると、後の点検の意味がすっと入ってきます。
適格請求書は、取引先(買い手)が「仕入税額控除」を受けるための証拠書類です。仕入税額控除とは、買い手が納める消費税を計算するときに、仕入れで払った消費税を差し引ける仕組みのこと。買い手がこの控除を受けるには、原則として必要事項がそろった適格請求書の保存が要ります。
つまり、自社の請求書に記載漏れがあると、困るのは自社というより受け取った取引先です。「この請求書だと控除に使えないので直してほしい」と差し戻しが発生し、そのやり取りの手間はお互いにかかります。記載事項の見直しは、細かいルールに合わせる作業に見えて、実は取引先に余計な手間をかけず、自社の請求書を気持ちよく使ってもらうための整えなのです。
適格請求書に必要な6つの記載事項
それでは、必要な6項目を順番に見ていきましょう。国税庁が示す記載事項は、次の6つです。

- 発行する事業者の氏名または名称と、登録番号:会社名(または屋号・氏名)に加えて、「T+13桁」の登録番号を記載します。ここが最初の抜けやすいポイントです。
- 取引を行った年月日:いつの取引かを示す日付です。1か月分をまとめる請求書なら、締め日や対象期間の書き方で対応できます。
- 取引の内容:何を売った(提供した)かの品目やサービス名。軽減税率(8%)の対象品目がある場合は、その品目に「軽減税率対象である旨」(※印など)を付けます。
- 税率ごとに区分して合計した対価の額と、適用税率:10%対象の合計と8%対象の合計を分けて記載し、それぞれ「10%」「8%」と税率も示します。金額は税抜・税込のどちらでも構いません。
- 税率ごとに区分した消費税額等:10%分の消費税額、8%分の消費税額を税率ごとに分けて記載します。ここも従来の請求書には無かった項目です。
- 請求書を受け取る事業者の氏名または名称:宛先(取引先名)です。
ざっくり言うと、①の登録番号/④⑤の「税率ごとの区分と消費税額」が、インボイスで新しく必要になった部分です。②③⑥はこれまでの請求書にもあったものが多いので、まずは①④⑤がそろっているかから見ると効率的です。
とくに抜けやすい3つのポイント
現場でよく「これが足りていなかった」となるのは、次の3か所です。
- 登録番号の「T」と13桁:番号だけ書いて先頭の「T」が抜けている、桁が足りない、といったケース。法人番号を持つ会社は「T+法人番号(13桁)」が登録番号になります。
- 税率ごとの消費税額(項目⑤):合計金額と全体の消費税額は書いてあるのに、「10%分・8%分」に分けた消費税額が無いパターン。1つの税率しか扱っていない事業でも、「10% 対象 ○○円、消費税 ○○円」と税率を明示しておくと安心です。
- 軽減税率対象の「※」表示(項目③):飲食料品などを扱う場合、どれが8%対象かの印と、欄外の注記(例:「※は軽減税率対象」)が要ります。8%の取引が一切なければ、この点は気にしなくて大丈夫です。
レジ向けの「適格簡易請求書」という軽い形もある
ここで一つ、知っておくと気が楽になる話を。小売業・飲食店・タクシーなど、不特定多数のお客さんに発行する業種では、記載事項を少し省いた「適格簡易請求書」(簡易インボイス)が認められています。

適格簡易請求書は、通常の6項目と比べて次の点が軽くなります。
- ⑥の「受け取る相手の氏名・名称(宛先)」が不要。レジで一人ひとりの宛名を書かなくてよい、ということです。
- ④の「適用税率」と⑤の「税率ごとの消費税額」は、どちらか一方の記載でよい(両方書いても構いません)。
一般的なレシートは、この簡易請求書の形になっていることが多いです。自社が小売や飲食など該当する業種なら、レジ・レシートのフォーマットが簡易インボイスの要件を満たしているかを、レジ会社やソフトの設定で確認しておくと安心です。「どちらの形で出すべきか」で迷うときは、業種と取引先を踏まえて税理士に一度確認しておきましょう。
具体例で見てみる(1か月分の請求書)
言葉だけだとイメージしづらいので、月まとめの請求書を小さな例で通してみましょう。10%対象と8%対象が混ざったケースです。
- 発行者:株式会社サンプル商店 登録番号 T1234567890123
- 宛先:株式会社○○御中
- 取引年月日:2026年6月分(6/30締め)
- 内容:事務用品ほか(10%対象)/お茶・お菓子など贈答用飲食料品 ※(8%対象)
| 区分 | 対象金額(税抜) | 消費税額 |
|---|---|---|
| 10%対象 | 50,000円 | 5,000円 |
| 8%対象 ※ | 20,000円 | 1,600円 |
| 合計 | 70,000円 | 6,600円 |
※は軽減税率対象
このように、税率ごとに「対象金額」と「消費税額」を分けて書き、登録番号と宛先、軽減税率の※注記が入っていれば、適格請求書の形として必要事項がそろいます。1つ通してみると、「特別な書類を新しく作る」のではなく、いつもの請求書に3つの要素を足すだけだと見えてきます。
ここを間違えると、何が変わる?
記載事項が欠けた請求書は、受け取った取引先が仕入税額控除に使いにくくなり、差し戻し・再発行のやり取りが発生します。とくに登録番号の抜け・誤り、税率ごとの消費税額の欠落は、相手が控除の計算に使えないため指摘されやすい部分です。
ただ、これは「一度でも間違えたら大変なことになる」という話ではありません。適格請求書は後から「修正した適格請求書」を交付することもできますし、多くの会計・請求ソフトは、登録番号を登録して設定すれば必要項目を自動でそろえてくれます。大切なのは、自社の基本フォーマットに6項目がそろっているかを一度きちんと点検し、以後はその形で出し続けること。最初に土台を整えておけば、毎回ゼロから悩む必要はなくなります。
自社の請求書 見直しチェックリスト
時間がない現場向けに、まずは「最低ライン」から。自社の請求書フォーマットを1枚手元に置いて、上から確認してみてください。
最低ライン(新しく足された3点)
- 発行者名のそばに「T+13桁」の登録番号が入っている
- 10%・8%を税率ごとに区分した合計額と適用税率が書いてある
- 税率ごとの消費税額(10%分/8%分)が分けて書いてある
従来からの項目(あわせて確認)
- 取引年月日(対象期間・締め日)が分かる
- 取引内容が分かる(軽減税率対象があれば※などの印と注記)
- 宛先(取引先名)が入っている ※簡易請求書なら省略可
優先順位
- 上の「足された3点」→ 従来項目 → 軽減税率の※注記 → 端数処理のルール確認
代替(時間がないとき)
- 会計・請求ソフトを使っているなら、設定画面で登録番号を登録し、「インボイス対応(適格請求書)」の様式を選ぶだけで大半が整う
免除条件(気にしなくてよい場面)
- 8%(軽減税率)の取引が一切ない → ③の※注記は不要。10%だけで区分すればよい
- 不特定多数向けの小売・飲食・タクシーなど → 宛先の省略や、税率/消費税額どちらか一方でよい「簡易請求書」で対応できる
注意喚起ポイント
- 登録番号の「T」抜け・桁違いに注意(法人は T+法人番号13桁)
- 「全体の消費税額」だけでなく「税率ごとの消費税額」が要る
- 端数処理(消費税額の円未満)は、1つの請求書につき税率ごとに1回。細部は税理士に確認
明日やること(まず1つだけ)
一度に全部を整えようとすると、それだけで気が重くなります。 明日やることは、「直近で自社が発行した請求書を1枚だけ手元に出し、上の『足された3点』——登録番号・税率ごとの区分・税率ごとの消費税額——がそろっているか確かめる」だけで十分です。
もし1つでも足りていなければ、それは「大きなミス」ではなく「フォーマットにひと項目足せば直るポイント」が見つかった、ということ。ソフトの設定なのか、テンプレートの手直しなのか——直し方が分かれば、あとは一度整えるだけです。判断に迷う項目があれば、その場で結論を出さず「要確認」とメモして、税理士に相談する材料にすれば大丈夫です。
最後に
インボイス制度は、登録して終わりではなく、日々の請求書を新しい形に合わせていく——その地味な作業を、ほかの記帳や入金確認の合間にひとりで進めているのは、決して簡単なことではありません。

でも、これは一発で完璧を出す試験ではありません。必要なのは6項目。しかも新しく足すのは3つだけ。自社のフォーマットを一度そろえてしまえば、もう毎回「これで合ってる?」と迷う状態には戻りません。 今日、6項目の地図がひとつ頭に入ったなら、それはもう「よく分からない制度対応」が「点検すれば済む作業」に変わり始めた証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日確かめられたところまでで、十分前に進んでいます。
本記事は一般的な実務情報です。消費税・インボイス制度の取扱いは個別の事情や最新の通達によって異なります。記載事項の細部・端数処理・業種ごとの対応などは、国税庁のインボイス制度特設サイトや、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
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