源泉徴収票の束を前に、税務署あてと市区町村あての封筒を2つに仕分けている経理担当者

法定調書と給与支払報告書の提出先・期限|1月末に慌てない

「年末調整、やっと終わった……」 12月の精算を終えてほっと一息ついたころ、次にやってくるのが1月末の提出物ですよね。源泉徴収票、法定調書合計表、給与支払報告書——名前は聞いたことがあるのに、「結局、誰の分を・どこへ・いつまでに出すんだっけ」が毎年あいまいで、年明けの忙しさの中でまた身構えてしまう。その落ち着かなさは、ひとりで給与を回している人にとって、とても身近だと思います。

でも、ここで迷うのはあなたの準備不足のせいではありません。ややこしく感じる一番の理由は、提出先が「税務署」と「市区町村」の2か所に分かれているからです。逆に言えば、この「宛先の分かれ方」さえ一度つかんでしまえば、あとは同じ源泉徴収票を用途ごとに振り分けるだけになります。

この記事では、1月末の提出物を「誰の分を・どこへ・いつまでに」という3点にしぼって、一枚の地図にします。今日は細かい提出範囲の金額まで暗記しなくて大丈夫です。まずは全体の宛先と期限を、一緒にはっきりさせていきましょう。

結論:年末調整のあとにやる提出は、大きく次の2系統です。①法定調書(給与所得の源泉徴収票+法定調書合計表など)→ 所轄「税務署」へ。②給与支払報告書(+総括表)→ 従業員が1月1日に住んでいた「市区町村」へ。 どちらも提出期限は原則翌年1月31日です。ポイントは、給与支払報告書は原則「全員分」を市区町村へ出すのに対し、税務署へ出す源泉徴収票は「一定の金額を超える人だけ」という違い。金額基準や電子提出の義務範囲は改正で見直されるので、実際の作業前に国税庁・eLTAXの最新版を必ず確認してください。

そもそも「法定調書」とは:支払いを税務署に知らせる書類

金額の話に入る前に、言葉の意味だけ先に押さえておきましょう。ここがぼんやりしていると、作業が「言われたから出す書類仕事」になって、かえって迷いやすくなります。

法定調書とは、「誰に・何を・いくら払ったか」を税務署に知らせるために、法律で提出が義務づけられている書類の総称です。全部で数十種類ありますが、ひとり経理でよく出てくるのは次の3つくらいです。

そして、これらの調書を「今年はこの種類を何枚、合計いくら出します」と一覧にまとめた表紙が法定調書合計表(正式には「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」)です。税務署へは、この合計表と各調書をセットで提出します。

いっぽう給与支払報告書は、法定調書とは提出先の違う「市区町村向け」の書類です。中身は源泉徴収票とほぼ同じ内容ですが、こちらは住民税を計算するために、従業員が住む市区町村へ提出します。同じ給与のデータを、税務署用(源泉徴収票)と市区町村用(給与支払報告書)の両方に使う、とイメージすると整理しやすいです。

いちばんの迷いどころ:宛先が2つに分かれる

ここが、多くのひとり経理がつまずく核心です。年末調整で作った同じ給与データが、用途によって別々の宛先へ向かいます。まずは全体像を図で見ておきましょう。

中央の給与データから、源泉徴収票が税務署へ、給与支払報告書が市区町村へと左右に分かれていく流れの図
同じ給与データが、税務署(法定調書)と市区町村(給与支払報告書)の2つの宛先に分かれる

宛先ごとに整理すると、こうなります。

いちばん大きな違いは、枚数です。給与支払報告書は原則「全員分」を、それぞれの市区町村へ出します。従業員が3人いて住んでいる市が3つに分かれていれば、3つの市に出すことになります。いっぽう税務署へ出す源泉徴収票は、後で述べる金額基準を超える人だけ。つまり「市区町村へは広く全員、税務署へは一部だけ」と覚えておくと、混乱がぐっと減ります。

税務署へ出す源泉徴収票は「全員分」ではない

「源泉徴収票は全部税務署に出すもの」と思っていると、実は少し違います。従業員本人へは全員に交付しますが、税務署へコピーを提出するのは、給与額が一定の基準を超える人だけです。ここは現場でも迷いやすいところなので、代表的な基準だけ挙げておきます(金額はその年分の最新版で必ず確認してください)。

たとえば従業員がパート・アルバイト中心で、全員が年収500万円以下なら、税務署へ提出する源泉徴収票は0枚ということも普通にあります。その場合でも、法定調書合計表そのものは提出します(人数や支払総額を記載する表なので、該当者ゼロでも「今年はこの内容でした」と出すイメージ)。「全員分を税務署に送らなきゃ」と身構えなくて大丈夫、と知っておくだけで気が楽になります。

外部への報酬があれば「支払調書」も忘れずに

給与だけでなく、外部の個人に払った報酬がある場合は、支払調書も同じ1月末の提出物に加わります。ひとり経理で見落としやすいのがここです。

代表的なのは次のようなものです(基準額は最新版で確認)。

顧問税理士への報酬は、多くの会社で支払調書の対象になります。「毎月払っているあの顧問料も対象かも」と、一度確認しておくと安心です。これらも法定調書合計表に枚数と金額を記載し、税務署へ一緒に提出します。

給与支払報告書は「1月1日の住所地」がカギ

市区町村向けの給与支払報告書で、いちばんつまずきやすいのが「どの市区町村へ出すか」です。答えは、その従業員が翌年1月1日時点で住んでいた市区町村。年の途中で引っ越した人は、12月末〜1月1日時点の住所で判断します(会社の所在地ではありません)。

住民税は、この給与支払報告書をもとに市区町村が計算し、その年の6月からの給与天引き(特別徴収)につながっていきます。つまり1月末のこの提出が遅れると、後々の住民税事務にも影響します。だからこそ、期限は早めにカレンダーへ入れておきたいところです。

提出方法:紙・e-Tax・eLTAX・光ディスク

提出のしかたは、宛先ごとに窓口が分かれます。

なお、一定枚数以上を出す場合は、e-Tax等での電子提出が義務づけられています。この「枚数の基準」は近年の改正で引き下げられる方向で見直されているため、自社が義務の対象かどうかは、その年の国税庁の案内で必ず確認してください。従業員が少ないひとり経理の会社では、まだ紙で出せる場合も多いですが、eLTAXを使うと源泉徴収票と給与支払報告書を一度の入力で両方に振り分けられるため、慣れておくと翌年以降がぐっと軽くなります。

早見表:何を・どこへ・いつまでに

ここまでを一枚にまとめました。迷ったら、ここに戻ってきてください。

出すもの誰の分を宛先期限
給与所得の源泉徴収票(本人交付)全員従業員本人へ渡す年末調整後すみやかに
源泉徴収票+法定調書合計表金額基準を超える人+支払調書該当分所轄税務署(1か所)原則1/31
給与支払報告書+総括表原則、全員1/1時点の住所地の市区町村原則1/31
報酬等の支払調書基準額超の外部への支払い所轄税務署(合計表と一緒)原則1/31

こうして並べると、混乱の正体が見えてきます。「本人へは全員、市区町村へも原則全員、でも税務署へは基準超の人だけ」——この枚数の差さえ押さえれば、あとは同じデータの振り分け作業です。

よくあるつまずきポイント

毎年ここで「あれ?」となりやすい、というところを先にまとめておきます。どれも「知らないと迷う」もので、あなたの不注意ではありません。

チェックリスト:1月末の提出でつまずかないために

「全部を一度に完璧に」だと繁忙期に潰れてしまいます。そこで宛先ごとに、最低限これだけ、という形に分けました。

【本人への交付】

【税務署へ(法定調書)】

【市区町村へ(給与支払報告書)】

明日やること(まず1つだけ)

まだ7月で、1月末の提出はずっと先に感じるかもしれません。それでも、今できる一番かんたんな一手があります。

明日やることは、「去年出した法定調書合計表と給与支払報告書の控えを、1か所にまとめて開いてみる」だけで十分です。去年どの市区町村へ何人分出したか、税務署へ源泉徴収票を何枚出したかを眺めておくと、それがそのまま今年の「宛先リスト」の下書きになります。年の途中で入退社や引っ越しがあった人だけ、あとで差し替えればいいのです。

宛先の分かれ方さえ地図として持っておけば、年明けに一から組み立て直す必要はありません。今日、流れをひとつ思い出せたなら、それだけでもう来年1月の作業は少し軽くなっています。

最後に

法定調書と給与支払報告書は、1年間の給与や支払いを、税務署と市区町村へ正しく伝えるための「報告」の仕事です。宛先が2つに分かれ、枚数の条件も違い、しかも年に1回しか回ってこない——それをひとりで段取りして回しているのは、本当に大変なことだと思います。

税務署あてと市区町村あての提出書類を出し終え、控えを整理してひと息ついている落ち着いた表情の経理担当者

でも、これは「一度で全部を覚える試験」ではありません。税務署(法定調書)と市区町村(給与支払報告書)という2つの宛先さえ持っておけば、あとはその年の基準に合わせて、同じ給与データを振り分けるだけです。細かい金額基準はその年の資料とソフトに任せて、あなたは「何を・どこへ・いつまでに」の地図を持つ人でいれば十分です。

今日、その地図がひとつ頭に入ったなら、それはもう来年1月の準備が始まった証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日ここまで読めたところで、十分前に進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。法定調書・給与支払報告書の提出範囲・金額基準・電子提出の要否・期限は、税制改正や各市区町村の取扱いによって見直されます。最終的な判断は、国税庁・eLTAXの最新の一次情報や、顧問税理士・所轄税務署・お住まいの市区町村にご確認ください。

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