事務所のデスクで、発行する領収書と収入印紙のシートを前に、印紙を貼るかどうか金額を確かめている中小企業のひとり経理の担当者

収入印紙が必要な書類と金額|請求書・領収書・契約書で迷わない

取引先に渡す領収書を書き終えて、金額を見直したところで手が止まる。

「……これ、印紙いるんだっけ?」

引き出しには買い置きの200円の印紙がある。貼っておけば無難な気もする。でも、要らないものに貼ったら会社のお金が減るだけだし、逆に貼り忘れたら後で困る気もする。電卓で合計をもう一度叩いて、指が止まる。

この数十秒、ひとりで経理を回していると、月に何度も来ます。

迷うのは、あなたの確認が甘いからではありません。印紙税は「書類の種類」「金額」「渡し方」の3つが噛み合って決まるので、金額だけを見ても答えが出ない作りになっているのです。しかも、最近は同じ書類でもPDFで送れば要らない、というルートまで増えました。迷って当然です。

この記事では、印紙が要る書類・要らない書類/領収書の5万円ライン/消費税の書き方で判定が変わること/電子で送れば要らない理由/貼り忘れたときの直し方を順番に整理します。全部を覚えなくて大丈夫。まずは「手が止まったときに、どこを見れば答えが出るか」を一緒に決めてしまいましょう。

結論:ひとり経理の日常で印紙が問題になるのは、ほぼ紙で渡す領収書だけです。判断は3つの順番で足ります。①紙で渡すか、データで送るか(データなら印紙は不要)→ ②受け取ったお金の書類か(請求書・見積書・納品書だけなら不要)→ ③消費税を分けて書いたあとの本体金額が5万円以上か(5万円未満なら不要)。契約書は種類ごとに金額が変わるので、その都度国税庁の印紙税額一覧表で確かめれば十分です。

収入印紙は「紙の書類」にかかる税金

まず、大前提をひとつだけ。

収入印紙は、書類を買うための切手ではありません。印紙税という税金を、書類に印紙を貼ることで納めている——それだけのことです。法律で決められた種類の書類(これを「課税文書」といいます。印紙税がかかる文書、という意味です)を作ったときに、その税金を納める義務が発生します。

ここから、大事な性質が2つ出てきます。

「作った側が払う」「紙にかかる」。この2つを押さえておくと、あとの判断がぐっと軽くなります。

いちばん多い迷い:領収書は5万円から

ひとり経理が実際に迷うのは、9割がた領収書です。ここだけは、しっかり整理しておきましょう。

領収書(正しくは「金銭又は有価証券の受取書」といいます)は、記載金額が5万円未満なら非課税、つまり印紙は要りません。5万円以上になると、金額に応じて印紙が必要になります。

領収書に書いた金額必要な印紙
5万円未満不要(非課税)
5万円以上 100万円以下200円
100万円超 200万円以下400円
200万円超 300万円以下600円
300万円超 500万円以下1,000円
500万円超 1,000万円以下2,000円
金額を書いていない領収書200円

1,000万円を超える場合はさらに上の段があります(1,000万円超2,000万円以下で4,000円など)。高額の領収書を切るときは、そのつど一覧表で確かめれば大丈夫です。

日々の取引で出てくるのは、ほとんどが「5万円未満なら不要、5万円以上なら200円」の範囲です。まずはこの1行だけ、机の前に置いておけば足ります。

売上以外のお金を受け取ったときは、一律200円

もうひとつだけ補足を。同じ領収書でも、売上の代金ではないお金——たとえば借入金を受け取ったとき、保証金・敷金を預かったとき、保険金を受け取ったときなどの受取書は、5万円以上ならすべて一律200円です。金額が大きくても200円のまま、という点だけ覚えておくと落ち着きます。

判定に使うのは「合計」ではなく「本体」

領収書の金額欄を本体・消費税・合計の3行に分け、印紙の判定に使うのは本体の行であることを示した図
消費税を分けて書けば、判定に使うのは「本体」の行。合計ではありません

ここが、実務でいちばん効くところです。

領収書に消費税額を分けて書いている場合、その消費税額は印紙税の判定に使う金額に含めません。判定に使うのは、消費税を抜いた本体の金額です。

たとえば、こんな領収書。

書き方A:合計だけ書いた場合

領収金額 ¥53,900-
(消費税10%を含む)

この書き方だと、判定に使えるのは53,900円です。5万円以上なので、200円の印紙が必要になります。

書き方B:本体と消費税を分けて書いた場合

領収金額 ¥53,900-
 内訳 本体価格 49,000円
    消費税額  4,900円

こちらは本体が49,000円。5万円未満なので、印紙は不要です。

同じ取引、同じ受取額なのに、書き方だけで200円変わりました。「消費税額等が区分記載されている場合」という条件を満たすためには、消費税額そのものをはっきり書くことが必要です。「税込」「10%対象」とだけ書いてあって金額が分からないと、この扱いは使えません。

請求書のフォーマットを一度だけ直せば、ずっと効く

これは1枚ごとに頑張る話ではありません。領収書と請求書のひな形に「本体価格」「消費税額」の行を最初から入れておく。それだけで、5万円台前半の取引で毎回200円を数える時間がなくなります。

インボイス制度の下では、そもそも適格請求書に税率ごとに区分した消費税額を書くことが求められています。つまり、適格請求書の必須記載事項をきちんと満たしたひな形にしておけば、印紙の判定も自然と楽になる、ということです。ひとつ直せば、二か所が同時に楽になります。

なお、これは「印紙代を減らすために金額を分ける」テクニックではありません。実際の取引を、消費税法どおりに正しく書くと、結果として判定金額が本体価格になる——という話です。取引を分割して領収書を2枚に割るような処理は、実態と合わなくなるので避けてください。

印紙が要らない書類・場面

「これも要るのかな」と不安になりやすいけれど、実は不要なものを並べておきます。

請求書・見積書・納品書は不要

請求書は課税文書ではありません。見積書も、納品書も、注文書(申込書の一部を除く)も同じです。お金を「請求する」書類と、お金を「受け取った」書類は、印紙税では扱いがまったく違います。

ただし注意がひとつ。「請求書兼領収書」のように、受け取った事実まで書いてある書類は、領収書として扱われます。書類の名前ではなく、中身で決まる、というのが印紙税のルールです。ひな形の名前を変えるときは、ここだけ気をつけましょう。

クレジットカード払いの領収書は不要

カード決済のときに発行する領収書は、その場で現金を受け取っているわけではなく、信用取引です。そのため、「クレジットカード利用」と書類にはっきり書いてあれば、印紙は不要です。

逆に言うと、その記載がないと、見た目は普通の領収書なので課税扱いになります。カード決済のレシート・領収書のひな形に「クレジットカード利用」の一言が入っているか、一度だけ確かめておくと安心です。

電子マネーやコード決済については、決済のしくみによって扱いが分かれます。判断に迷うものは、所轄の税務署か顧問税理士に「うちのこの決済方法はどうなりますか」と聞いてしまうのがいちばん早いです。

データで送るなら不要

印紙税は「文書」にかかる税金でした。だから、領収書や契約書をPDFなどのデータで作成して、メールや電子契約サービスで相手に渡す場合、印紙は必要ありません。紙に出力して郵送する分だけが課税されます。

これは、ひとり経理にとってかなり大きい話です。毎月まとまった枚数の領収書を紙で出しているなら、電子交付に切り替えるだけで印紙代と貼る手間が同時に減ります。

もっとも、切り替えには保存側の準備も要ります。自社が出した控えも相手からもらったデータも、電子帳簿保存法の電子取引のルールに沿って保存する必要があるので、印紙代だけを理由に急がず、保存の受け皿とセットで進めるのが安全です。

5万円未満・営業に関しないもの

先ほどの5万円未満に加えて、「営業に関しない受取書」も非課税です。これは、公益法人や、個人が事業ではなく私的にお金を受け取った場合などが当たります。会社としての通常の売上には当てはまらないので、実務上は「うちは基本的に営業に関する側」と考えておけば大丈夫です。

契約書はどうする

契約書は、種類ごとに税額の表が違います。ひとり経理が全部を覚える必要はありません。「どの種類に当たるか」だけ見当をつけて、金額は一覧表で確かめる——この進め方で十分です。

会社でよく出てくるのは、この3つです。

なお、不動産の譲渡に関する契約書と建設工事の請負に関する契約書については、記載金額が一定額を超えるものに軽減措置があり、本則より低い税額になります。この軽減措置は現在2027年(令和9年)3月31日までに作成されるものが対象です。該当する契約書を扱うときは、税額表の「軽減後」の列を見てください。

契約書で押さえるポイントは、金額を暗記することではなく、「4,000円の第7号文書を見落とさない」ことです。金額が書いていない基本契約書は「印紙は要らないのでは」と思いがちですが、ここは一律4,000円がかかります。取引先と新しく基本契約を結ぶときは、思い出してください。

2通作ったら、2通とも要る

契約書を双方で1通ずつ保管するとき、印紙は原則として2通それぞれに必要です。1通だけ正本を作り、もう一方はコピーを持つ、という形にすれば1通分で済みます(ただし、コピー側に署名押印して原本と同じ効力を持たせると、それも課税文書になります)。

負担の分け方は、当事者どうしの取り決めで構いません。実務では「1通ずつ負担する」「折半する」のどちらもあります。契約書に負担の記載がないと後でもめやすいので、印紙代が大きくなる契約では、あらかじめ確認しておくと安心です。

貼り方・消印・貼り忘れたとき

消印まででワンセット

印紙は、貼っただけでは終わりません。印紙と書類にまたがるように、押印またはサインをして消す(消印)ところまでが納税です。

社判を押す位置がずれやすいときは、「印紙は左上、消印は印紙の左端にまたがるように」と、社内で置き場所を決めてしまうのがおすすめです。毎回考えなくて済みます。

貼り忘れに気づいたら

もし後から「あの領収書、印紙を貼っていなかった」と気づいたら。

まず、落ち着いて大丈夫です。気づいた時点で自主的に申し出れば、負担は軽くなります。

この差を作るのは、金額の大きさではなく、気づいたときに動いたかどうかです。「印紙税不納付事実申出書」という書類で申し出ます。金額が小さくても、まとまった枚数で出てきたときは、税理士に相談したうえで早めに手を打つほうが結果的に軽く済みます。

なお、過怠税は法人税の計算では経費になりません(損金不算入)。この扱いは租税公課の仕訳で整理しているとおりです。

間違えて貼ってしまったら

要らない書類に貼ってしまった、金額を間違えて多く貼った、書き損じた——こういうときは、所轄の税務署に「印紙税過誤納確認申請書」を出せば還付を受けられます。貼った書類の現物を持っていくので、捨てずに取っておくのがポイントです。

未使用のまま余った印紙は、郵便局で別の額面の印紙や切手に交換してもらえます(手数料がかかります)。現金には戻せませんが、200円が使い道なく引き出しに眠るよりは動かせます。

印紙にまつわる記帳と保管

判断がついたら、あとは記録です。

印紙を買ったとき(郵便局で10,000円分・現金払い)

(借方)租税公課 10,000 / (貸方)現金 10,000
摘要:収入印紙 購入(郵便局)

印紙を貼った領収書の控えは、通常の証憑と同じように保管します。控えに印紙を貼ることはありませんが、「いつ・いくらの印紙を貼った領収書を出したか」が後から追えるほうが安心です。領収書の控えを日付順にとじておくだけで足ります。整理のしかたは証憑の整理・ファイリングにまとめています。

印紙で迷ったときのチェックリスト

書類を前に手が止まったら、上から順に見てください。3つ目までで、たいてい答えが出ます。

明日やること(まず1つだけ)

全部を整えようとすると、それだけで気が重くなります。明日やることは、ひとつで十分です。

自社の領収書のひな形を開いて、「本体価格」と「消費税額」の行があるか確かめる。

なければ、行を1本足す。それだけで、5万円台前半の取引で毎回止まっていた数十秒と、200円の印紙が消えます。しかもこの直し方は、インボイスの記載事項を満たす方向とぴったり同じです。ひとつの手直しが、二か所に効きます。

余力があれば、その次に「クレジットカード利用」の一文がひな形に入っているかを見てみてください。2つとも、一度直せば来年も再来年も効き続けます。

最後に

印紙は、金額でいえば200円のことです。でも、その200円のために電卓を叩き直して、引き出しを開けて、貼って、消印して、記帳する。小さな作業だけれど、判断を間違えないように毎回きちんと止まって確かめている——それは、雑に流していない人にしかできないことです。

領収書の判断と印紙の処理を終え、書類をきれいにそろえて落ち着いた表情で次の仕事に進むひとり経理の担当者

覚えることは、たくさんあるように見えて、実は入口の3つだけでした。紙かデータか。受け取った書類か。本体金額が5万円以上か。この3つを上から順に見れば、手はもう止まりません。

今日、ひな形を1行直すところまでできたなら、それで十分です。細かい税額は覚えなくて大丈夫。困ったらまたこの表を見に来てください。ここで一緒に確かめられます。

本記事は一般的な実務情報です。印紙税の課税文書の判定、記載金額の考え方、軽減措置の適用期間や過怠税の取扱いは、書類の記載内容や個別の事情、最新の法令・通達によって異なり、改正されることもあります。最終的な判断は、国税庁の情報や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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