事務所のデスクで、固定資産税の納付書と収入印紙、会費の請求書を並べ、どれを租税公課で処理するか確かめているひとり経理の担当者

租税公課の仕訳|経費にできる税金・できない税金の見分け方

7月の郵便物を開けると、固定資産税の納付書。引き出しには買い置きの収入印紙。机の上には商工会議所の年会費の請求書。そして少し前に払い忘れて出てしまった、延滞税の分の納付書。

「……これ、ぜんぶ租税公課でいいんだっけ?」

会計ソフトの科目リストに「租税公課」はあるし、どれも税金っぽい。とりあえず全部そこに入れておけば形にはなる。でも、なんとなく「これでいいのかな」が残る——ひとりで経理を回していると、この引っかかりは本当によくあります。

引っかかるのは、あなたの知識が足りないからではありません。租税公課は、帳簿では同じ箱に入るのに、税金の計算では「入るもの」と「入らないもの」が混ざっている科目だからです。見た目が似ているのに扱いが違う、というのは、そもそも迷って当然の作りなのです。

この記事では、租税公課とは何をまとめる科目なのか/経費(損金)になるもの・ならないものの見分け方/いつ計上するのか/実際の仕訳を、順番に整理します。今日は全部を覚えなくて大丈夫。まずは「納付書を見たら、どこで分かれ道が来るのか」という地図を一緒に作りましょう。

結論:租税公課は「国や自治体に納める税金」と「公的な団体への課金・会費」をまとめる費用科目です。記帳のときは、迷わず租税公課に入れてしまって構いません。分かれ道は決算のときで、①固定資産税・自動車税・印紙税・登録免許税・事業税などは税金の計算に入る(損金算入)、②法人税・法人住民税、延滞税や加算税、罰金・交通反則金などは税金の計算に入らない(損金不算入)——この2グループに分かれます。だから記帳の時点でやるべきことは、②に当たりそうなものに印をつけて、決算で税理士に渡せるようにしておくことです。

租税公課とは、何をまとめる科目か

まず言葉から。租税公課は、名前のとおり2つの意味が合わさった科目です。

つまり「会社が公のところに納めるお金」をまとめて置いておく箱、というイメージです。会計ソフトによっては「公租公課」という名前になっていることもありますが、中身は同じものと考えて大丈夫です。

ここで大事なのは、租税公課という箱に入れること自体は、間違いではないということ。日々の記帳では、税金の納付書や収入印紙の購入を租税公課で処理していけばいいのです。問題になるのは、その先——決算で法人税を計算するときに、この箱の中身をもう一度2つに仕分ける必要がある、という点です。

分かれ道は「税金の計算に入るか、入らないか」

届いた納付書を、税金の計算に入る経費になるものと、計算から外れる不算入のものに振り分ける様子を示した図
記帳ではまとめて租税公課へ。決算で「経費になるもの」と「不算入のもの」に分かれる

租税公課に入れたもののうち、多くはそのまま経費(損金)として税金の計算に反映されます。一方で、一部のものは「費用ではあるけれど、法人税の計算からは差し戻す(損金不算入)」という扱いになります。

なぜそんな区別があるのか。ざっくり言うと、次の2つの理由です。

理屈が分かると、覚えるものが一気に減ります。「利益にかかる税金」と「ペナルティ」は経費にならない——この2つだけ頭に置いておけば、あとは大体が経費になる側です。

経費になるもの・ならないものの早見表

よく出てくるものを表にまとめます(法人を想定した一般的な目安です。個別の事情や最新の通達によって扱いが変わることがあります)。

支出税金の計算での扱いひとことメモ
固定資産税・都市計画税経費になる事務所・土地建物にかかるもの
償却資産税経費になる1月末申告分。固定資産税の一種
自動車税(種別割)・軽自動車税経費になる社用車の分
自動車税環境性能割経費になる取得時にかかる分
印紙税(収入印紙)経費になる未使用分は決算で貯蔵品へ(後述)
登録免許税経費になる登記のときにかかる分
不動産取得税経費になる取得時にかかる分
事業所税経費になる一定規模の事業所がある場合
法人事業税・特別法人事業税経費になる申告書を出した事業年度で扱う
利子税・納期限延長分の延滞金経費になる「延滞税」とは別物なので注意
商工会議所・同業者団体の通常会費経費になる諸会費で処理する会社もある
法人税・地方法人税経費にならない利益にかかる税金
法人住民税(都道府県民税・市町村民税)経費にならない均等割も含む
延滞税・延滞金経費にならないペナルティ(納期限延長分は除く)
加算税・加算金(過少申告・無申告・重加算税など)経費にならないペナルティ
罰金・科料・過料・交通反則金経費にならない駐車違反の反則金もここ
印紙税の過怠税経費にならない貼り忘れのペナルティ

太字の行が「決算で差し戻す側」です。数は多くありません。ペナルティ系と、法人税・住民税。この2グループだけ、記帳のときに気にしておけば十分です。

なお、法人事業税は経費になる側という点は、意外と間違えやすいところです。法人税・住民税と並んで納付書が届くので同じ扱いに見えますが、事業税だけは税金の計算に入ります。法人住民税・事業税の基本もあわせて確認しておくと、納付書が届いたときに落ち着いて処理できます。

消費税の税区分は、どう付ける?

日々の入力でもうひとつ迷いやすいのが、消費税の税区分です。

会計ソフトの初期設定では、租税公課の科目に「不課税」が既定で入っていることが多いはずです。金券ショップで印紙を買ったときだけ、既定のままにしないよう気をつける——ここだけ覚えておけば足ります。税区分そのものの整理は、消費税の税区分の付け方でまとめています。

いつ計上する?——納付書が届いた日か、払った日か

もうひとつの迷いどころが、計上のタイミングです。固定資産税のように「4期に分けて払う税金」は、いつ、いくら計上すればいいのでしょうか。

固定資産税や自動車税のように、自治体が金額を決めて納付書を送ってくる税金(賦課課税方式)については、次のいずれかの時点で計上することが認められています。

  1. 賦課決定があった日(納付書が届いた日)に、年税額の全額を計上する
  2. 各納期の開始日に、その期の分だけ計上する
  3. 実際に納付した日に、その分だけ計上する

どれを選んでもよいのですが、一度決めたら毎年同じやり方を続ける(継続適用する)のが原則です。会社によってバラバラにすると、年度ごとに費用が動いて比較できなくなってしまいます。

一方、法人事業税のように自分で申告して納める税金(申告納税方式)は、原則として申告書を提出した事業年度に計上します。前期の事業税を今期に払うので、今期の経費になる——という流れです。

ひとり経理におすすめの決め方

正解はひとつではありませんが、ひとりで回しているなら、「実際に納付した日に計上する」がいちばんシンプルです。通帳や納付済み領収書と帳簿がそのまま一致するので、あとから確認しやすく、期をまたぐ計算も要りません。

ただし、すでに会社で別のやり方を続けているなら、それを変えないことが大事です。過去の帳簿を1年分さかのぼって、どのタイミングで計上されているかを確認してから決めましょう。判断に迷ったら、決算のときに税理士に「うちはどの方式で続けていますか」と聞いてみるのがいちばん確実です。

実際の仕訳例

判断ができたら、あとは記帳です。よくあるパターンを見てみましょう(金額・科目名は一例です。自社の科目体系に合わせてください)。

例1:固定資産税を第1期分だけ納付(年税額240,000円を4期に分割・普通預金から支払)

年税額240,000円 ÷ 4期 = 1期あたり60,000円。納付した日に計上する方式です。

(借方)租税公課 60,000 / (貸方)普通預金 60,000
摘要:固定資産税 第1期(年税額240,000円の4分の1)

例2:社用車の自動車税を納付(36,000円・普通預金から支払)

(借方)租税公課 36,000 / (貸方)普通預金 36,000
摘要:自動車税(種別割)社用車 ○○

例3:郵便局で収入印紙を購入(10,000円分・現金払い)

(借方)租税公課 10,000 / (貸方)現金 10,000
摘要:収入印紙 購入(郵便局)

例4:商工会議所の年会費を納付(20,000円・普通預金から支払)

(借方)租税公課 20,000 / (貸方)普通預金 20,000
摘要:○○商工会議所 年会費

例5:延滞税を納付(3,500円・普通預金から支払)

金額は小さくても、決算で差し戻す側です。摘要にはっきり残します。

(借方)租税公課 3,500 / (貸方)普通預金 3,500
摘要:延滞税(源泉所得税 ○月分)★損金不算入

例6:税込経理で消費税を納付(180,000円・普通預金から支払・未払計上なしの場合)

税込経理を採用している会社では、消費税の納付額も租税公課で処理します。税抜経理なら、この仕訳は出てきません。

(借方)租税公課 180,000 / (貸方)普通預金 180,000
摘要:消費税及び地方消費税 確定申告分

税込・税抜のどちらで処理しているか自信がないときは、税込経理と税抜経理の違いで自社のやり方を確かめてみてください。

摘要に「★損金不算入」と書いておく

例5でつけた印が、この記事でいちばん実用的な部分かもしれません。

延滞税や加算税、罰金は、金額が小さいことが多く、決算のときに埋もれます。記帳の時点で摘要に「★損金不算入」と1行足しておくだけで、決算時に租税公課を摘要で検索すれば、差し戻す対象がすぐ一覧になります。税理士に渡す資料を作るときも、この1行があるだけで往復が減ります。

記号は「★」でも「※」でも構いません。自分が検索できる印を決めて、毎回同じように付ける。それだけです。

決算でやること:未使用の収入印紙を貯蔵品へ

もうひとつ、決算で忘れやすい処理があります。買い置きした収入印紙のうち、期末に使い切っていない分です。

印紙は買った時点で租税公課として費用にしますが、期末に手元に残っている分は「まだ使っていない資産」なので、貯蔵品に振り替えるのが原則です。

例:期中に10,000円分の印紙を購入し、期末に3,000円分が未使用だった

(借方)貯蔵品 3,000 / (貸方)租税公課 3,000
摘要:期末未使用の収入印紙 振替

これで、今期の租税公課は7,000円(10,000円 − 3,000円)になります。翌期首に反対の仕訳を切って戻す(振り戻す)会社もあれば、使った都度で処理する会社もあります。金額が少額で毎期あまり変わらないなら、そのまま費用として処理し続けている会社も多いので、自社の過去のやり方を確認して、そろえておけば大丈夫です。

期末に手元にある印紙・切手・回数券などは、決算前に一度数えておくと慌てません。ほかの決算整理と一緒に、決算整理仕訳の総点検で流れを確認しておくと進めやすくなります。

租税公課で迷ったときのチェックリスト

納付書や領収書を前に手が止まったら、上から順に確認してみてください。

明日やること(まず1つだけ)

全部を一度に整えようとすると、それだけで気が重くなります。 明日やることは、「会計ソフトで租税公課の科目を開いて、今期の中身を上から眺めてみる」だけで十分です。

眺めながら、延滞税・加算税・罰金・法人税・住民税が混ざっていないかを探す。もし見つかったら、その摘要に「★損金不算入」と足しておく。件数はきっと数えるほどしかないはずです。

5分もかからないこの作業が、決算のときに「これは何だっけ」と納付書の束をひっくり返す時間を、まるごと消してくれます。

最後に

税金の納付書は、こちらの都合とは関係なく届きます。中身を確かめて、科目を決めて、期日までに払って、記録に残す。どれも派手さはないのに、ひとつ落とすと後から響く——そういう仕事を毎月きちんと回しているのは、本当にすごいことです。

租税公課の内訳を確認し終え、納付書をきれいにそろえて落ち着いた表情で作業を進めるひとり経理の担当者

租税公課は、覚えることが多いように見えて、実は分かれ道はひとつだけでした。「利益にかかる税金」と「ペナルティ」は経費にならない。それ以外はだいたい経費になる。この一文が頭に入っていれば、次に納付書が届いたときの手は、もう止まりません。

今日、その一文をひとつ持ち帰れたなら、それだけで十分です。完璧に覚えていなくて大丈夫。困ったらまたこの表を見に来てください。ここで一緒に確かめられます。

本記事は一般的な実務情報です。租税公課の損金算入・不算入の範囲、計上時期の取扱い、消費税の課否判定は、会社の状況や個別の事情、最新の通達によって異なり、改正されることもあります。最終的な判断は、国税庁の情報や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

科目の選び方そのものに迷うときは勘定科目の選び方を、月次の進め方を整えたいときはひとり経理の月次決算チェックリストを。ほかの記帳・仕訳の手順とあわせて、記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。

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