決算後に届いた法人税・法人住民税・法人事業税の納付書を机に並べ、それぞれどこに納めるものかを確かめている中小企業の経理担当者

法人住民税・事業税の基本|均等割と納付の段取り

決算を終えて法人税の計算がひと段落したころ、今度は「法人都道府県民税」「法人市町村民税」「法人事業税」といった、見慣れない名前の納付書や申告書が出てきます。 「法人税は分かる。でも、この住民税と事業税って、どこに、いくら、いつ納めるんだろう」——ひとりで経理を回していると、税金の種類が増えるたびに手が止まってしまいますよね。

でも、ここで迷うのは知識が足りないからではありません。法人が納める税金は「国に納めるもの(法人税)」と「地方に納めるもの(住民税・事業税)」に分かれている——この地図を最初に持っていないと、誰でも混乱するところなのです。名前は難しそうでも、中身は「会社があるからかかる分」と「もうけに応じてかかる分」の組み合わせにすぎません。

この記事では、法人住民税と法人事業税がそもそも何なのか、どういう構造でいくらくらいかかるのか、いつ・どこに申告して納めるのかを、順番に一つずつ分解します。今日は全部を覚えなくて大丈夫。まずは「地方にも税金を納める」という全体像をつかむ、その一歩まで一緒に進めていきましょう。

結論:会社が決算後に納める税金は、大きく 国に納める法人税 と、地方(都道府県・市区町村)に納める法人住民税・法人事業税 に分かれます。法人住民税は「均等割+法人税割」の2階建てで、均等割は赤字(所得ゼロ)でもかかる定額(おおむね年7万円〜。資本金等や従業員数、自治体で変わります)。法人事業税は原則として所得に応じてかかるので、赤字の年はかからないのが基本です。申告・納付の期限は法人税と同じく原則として決算日の翌日から2か月以内。地方税は eLTAX(エルタックス) でまとめて電子申告・納付できます。まずは「国の分(法人税)とは別に、地方にも納める税金がある」ことを押さえるところから始めれば大丈夫です。

いま何が起きているか:会社の税金は「国」と「地方」に分かれている

細かい話に入る前に、税金の全体像をざっくり見ておきましょう。ここが頭に入ると、どの納付書が何のためのものか、見当がつくようになります。

会社のもうけ(所得)にかかる税金は、納め先で2つに分けられます。

同じ「決算のあとに納める税金」でも、法人税は税務署(国税)住民税・事業税は都道府県や市区町村(地方税)と、窓口が別なのです。だから申告書も納付書も別々に届きます。「1枚見落としていた」ということが起きやすいのは、この構造のためです。責任感の問題ではなく、もともと分かれているから、と考えて大丈夫です。

なお、法人住民税と法人事業税は、それぞれ「都道府県に納める分」と「市区町村に納める分」にさらに分かれます(事業税は都道府県のみ)。数が多く感じますが、後述するeLTAXを使えば、地方税はまとめて扱えます。まずは「国と地方の2系統がある」——これだけ押さえれば十分です。

法人住民税:均等割+法人税割の「2階建て」

法人住民税が、赤字でもかかる定額の均等割と、所得に応じてかかる法人税割の2つで構成されることを示した図
法人住民税は2階建て。下段の均等割は赤字でもかかる定額、上段の法人税割は法人税額に応じてかかる

まず法人住民税から見ていきます。これは、会社がその地域に事業所を置いていることに対してかかる地方税で、均等割法人税割の2つを合わせたものです。「2階建て」とイメージすると分かりやすいです。

均等割——赤字でもかかる定額部分(1階)

均等割は、もうけ(所得)に関係なく、会社があるだけでかかる定額の税金です。ここが法人住民税の最初のつまずきどころ。赤字で法人税がゼロの年でも、均等割はかかります

金額は、資本金等の額従業員数、そして自治体によって段階が決まっています。いちばん小さい区分(資本金1,000万円以下・従業員50人以下)で、都道府県民税と市町村民税を合わせておおむね年7万円が目安です(標準税率の場合。自治体によって上乗せがあることもあります)。

「赤字なのに税金がかかるの?」と驚くかもしれませんが、これは地域で事業を営むための会費のようなもの、と考えると腑に落ちます。金額そのものより、赤字でも納付が発生する=納め忘れやすいという点を覚えておくのが大切です。

法人税割——法人税額に応じてかかる部分(2階)

もう一方の法人税割は、名前のとおり法人税の額をもとに計算される部分です。おおまかには「法人税額 × 住民税率」で決まるので、もうけが出て法人税が発生した年にかかり、赤字で法人税がゼロなら法人税割もゼロになります。

つまり法人住民税は、

この2つの合計、と整理できます。赤字の年でも1階の均等割だけは残る——ここだけ押さえておけば、法人住民税の見当はつきます。

法人事業税:もうけに応じてかかる地方税

次に法人事業税です。これは、会社が事業を行うにあたって地域の行政サービスを使っていることに対して、都道府県に納める税金です。

中小企業(資本金1億円以下)の場合、事業税は原則として所得割——その年の所得(もうけ)に応じてかかるのが基本です。ですので、赤字の年は事業税もかからないのが原則になります(均等割のような定額部分がない点が、住民税との違いです)。

もうひとつ押さえておきたいのが、事業税と一緒に申告・納付する特別法人事業税という国税です。名前は「国税」ですが、事業税の申告書の中で一緒に計算し、都道府県にまとめて納めるしくみになっています。会計ソフトや税理士の作る申告書では自動で計算されることが多いので、「事業税とセットで動くもの」とだけ知っておけば十分です。

なお、資本金1億円超の大きな会社では「外形標準課税」といって所得以外の基準でもかかるしくみがありますが、ひとり経理で扱う多くの中小企業には当てはまりません。うちは所得に応じてかかる分が中心、と考えておけば、まずは大丈夫です。

手順:申告と納付の段取り

構造が分かったら、実際の申告・納付の流れを見ていきましょう。順番どおりに進めれば大丈夫です。

① 期限は法人税と同じ「決算日の翌日から2か月以内」 法人住民税・法人事業税の申告と納付の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内。法人税と同じタイミングです。たとえば3月31日決算なら、原則5月31日までに、国(法人税)も地方(住民税・事業税)もまとめて申告・納付する、という段取りになります。決算スケジュールは決算までにやることを逆算する決算スケジュールで全体像を確認しておくと動きやすいです。

② 申告先は「都道府県」と「市区町村」 地方税の申告書は、都道府県(都道府県民税・事業税)市区町村(市町村民税)の両方に提出します。事業所が1つなら、その所在地の都道府県と市区町村です(東京23区内は都税事務所にまとめて、など地域差があります)。複数の都道府県・市区町村に事業所があると、そのすべてに申告が必要になります。

③ eLTAX(エルタックス)でまとめて電子申告・納付 地方税の電子申告・納付は、eLTAX(エルタックス)という共通のシステムで行えます。複数の自治体あての申告や納付を、まとめて電子で送れるので、紙で1件ずつ用意するより手間がぐっと減ります。納付も、eLTAXの共通納税を使えば、まとめて電子で済ませられます。まだ使っていなければ、税理士に相談しながら準備を進めるとスムーズです。

④ 赤字でも「均等割の申告・納付」は必要 くり返しになりますが、赤字で法人税・事業税がゼロの年でも、法人住民税の均等割は申告・納付が必要です。「今期は赤字だから申告しなくていい」と思い込むと、均等割の納め忘れにつながります。赤字の年こそ、均等割の納付書を見落とさないよう気をつけましょう。

⑤ 中間申告が必要になることもある 前年の税額が一定額を超えると、期の途中で中間申告・納付が必要になる場合があります。地方税も法人税と同じように中間の仕組みがあります。詳しくは中間申告・予定納税の仕組みと納付の準備で、資金繰りの備えとあわせて確認しておくと安心です。

決めた内容は、いちど社内メモに「均等割は年◯万円」「申告・納付は◯月末まで」「eLTAXで納付」と残しておくと、翌期の自分がとても助かります。

慌てないためのチェックリスト

「全部を完璧に暗記」ではなく、決算後に上から順に確認できる形にしました。できるところまでで十分です。

【全体像を確認】

【法人住民税】

【法人事業税】

【申告・納付】

明日やること(まず1つだけ)

全部を一度に理解しようとすると、それだけで気が重くなります。 明日やることは、手元にある直近の決算の納付書(または申告書控え)を並べて、「法人税(国)」「法人住民税(県・市)」「法人事業税(県)」に色分けしてみるだけで十分です。

どれが国あてで、どれが県・市あてかが見えるだけで、ずらっと並んでいた納付書が「意味のあるかたまり」に変わります。とくに、赤字の年でも残る均等割がどれか分かれば、いちばん見落としやすいポイントを先に押さえられます。まずはこの色分けの地図ができれば、地方税を「読む」第一歩は、もう踏み出せています。

最後に

法人税だけでも大変なのに、そこへ住民税・事業税と名前の違う税金が重なると、誰だって身構えてしまいます。ひとりで会社の税金を背負いながら、初めて見る納付書を前にここまで調べているだけで、本当に丁寧な仕事です。

法人住民税・事業税の申告と納付の段取りを確認し終えて、見通しが立って落ち着いた表情の中小企業の経理担当者

でも、住民税も事業税も、根っこは「会社があるからかかる分(均等割)」と「もうけに応じてかかる分(法人税割・所得割)」の組み合わせにすぎません。むずかしい計算を一気に覚える必要はありません。国と地方の2系統を分け、赤字でも残る均等割に気をつけ、eLTAXでまとめて出す。迷うところは税理士や自治体に確認する。それだけで、初めての地方税はぐっと扱いやすくなります。今日、「地方にも納める税金がある」と地図が少しでもつかめたなら、それはもう前に進み始めた証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日ここまで読めたところまでで、十分前に進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。均等割の金額・区分、事業税の税率、中間申告の要否、申告・納付の期限や電子申告の取扱いは、自治体や会社の状況、個別の事情、最新の制度改正によって異なります。最終的な判断は、各自治体(都道府県税事務所・市区町村)や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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