固定資産台帳の画面と、倉庫にまだ残っている機械のメモを見比べて、台帳と現物が合っているか確かめている中小企業のひとり経理の担当者

固定資産台帳の整え方|台帳が動く3つの瞬間と現物合わせの手順

決算の前、固定資産台帳をひさしぶりに開きます。

上から順に見ていくと、途中で手が止まります。「事務所エアコン」「梱包用シーラー」……あれ、このシーラー、去年の夏に壊れて捨てたよね?

倉庫を思い浮かべても、あの機械はもうありません。でも台帳には毎年きちんと償却額が計上されていて、今年も残高が残っています。

そして、たぶん似たものが他にもあります。3年前のノートパソコン。使わなくなった棚。誰かが持ち出したまま戻ってこないプリンター。

台帳と現物が、いつのまにかずれている。気づいてしまうと、どこから手をつければいいのか分からなくなりますよね。

大丈夫です。ここは、ひとり経理でなくてもずれるところです。そして直し方は決まっています。

今日は「台帳をゼロから作り直す」のではなく、動くはずだったのに動かなかった1か所を見つけて直す方法を、一緒に整理していきます。

結論:台帳が動くのは3つの瞬間だけ。漏れるのはいつも最後の1つ

先に答えです。固定資産台帳が更新されるタイミングは、たった3つしかありません。

① 買ったとき(取得)/② 毎期の決算(償却)/③ 手放したとき(除却・売却)

このうち、①と②はほぼ自動で回ります。 ①は請求書が来るので気づきますし、②は会計ソフトや税理士が計算してくれます。

漏れるのは、いつも③だけです。理由はシンプルで、物を捨てても、経理には書類が1枚も届かないからです。

だから、台帳を整えるというのは、実務上ほとんど「③の抜けを拾い直すこと」を意味します。

やることは、この3つです。

やることかかる時間いつやる
1. 台帳に持つ項目をそろえる30分一度だけ
2. 現物と突き合わせる半日年1回
3. 除却の連絡が来る道を1本つくる15分一度だけ

3が一番地味ですが、来年から2がラクになるのは3のおかげです。今日は1と3だけ読んで、2は決算前に戻ってきてもらっても構いません。

何が起きているか:捨てたことは、誰も経理に教えてくれない

なぜ③だけが漏れるのか。ここを一度だけ見ておくと、直し方が納得できます。

固定資産を買ったときは、必ず請求書や納品書が経理に回ってきます。支払いが発生するからです。お金が動く以上、経理を通らないわけがありません。

固定資産台帳が動く3つの瞬間を、買ったとき・毎期の償却・手放したときの順に並べた図
台帳が動くのはこの3回だけ。前の2つは書類やソフトが教えてくれますが、3つ目だけは誰も教えてくれません。

毎期の償却も同じです。決算で必ず計算するので、忘れようがありません。会計ソフトなら、登録さえしてあれば自動で計上されます。

ところが、捨てたときはどうでしょう。

現場で機械が壊れる。誰かが「もう使えないね」と言う。産廃業者に引き取ってもらう。倉庫がすっきりする。——ここまで、経理に紙が1枚も来ません。処分費用がかかったときだけ請求書が来ますが、無料で引き取られたり、そのまま置きっぱなしになったりすると、それすらありません。

つまり、③が漏れるのは、あなたの注意不足ではなく、情報が届かない構造だからです。ここは仕組みで塞ぐしかありません。

そして、台帳に残ったままの資産(現場では「幽霊資産」と呼ばれたりします)を放っておくと、地味に3つの損があります。

どれも、大事故ではありません。でも、毎年少しずつ効いてきます。

ステップ1:台帳に持つ項目をそろえる

まず、台帳そのものを見てみましょう。会計ソフトの固定資産台帳を使っているなら、必要な項目はたいてい最初から入っています。Excelで管理している会社は、次の項目がそろっているか確認してください。

項目何のために持つか
資産番号現物のシールと台帳を結ぶ。現物合わせの命綱
資産の名称「機械装置」ではなく「梱包用シーラー ○○社製」まで書く
取得年月日償却の開始月を決める
取得価額償却計算と、区分(少額・一括・通常)の判定に使う
数量同じ物を複数買ったときに必要
耐用年数国税庁の耐用年数表で調べた年数
償却方法定額法/定率法など
期首帳簿価額前期末から引き継いだ残高
当期償却額その期に費用にした金額
期末帳簿価額期首 − 当期償却額
設置場所現物合わせで一番使う。「本社2階」「A倉庫」まで書く
区分(少額/一括償却/通常)償却資産税の申告対象かどうかが変わる
除却・売却年月日手放した日。空欄なら「まだ持っている」の意味

太字にした3つは、Excel管理だと抜けがちなのに、実務でいちばん効く項目です。

とくに設置場所。これがないと、年1回の現物合わせが「事務所じゅうを歩き回って探す作業」になります。逆に場所さえ入っていれば、「A倉庫にあるはずの5件」を見に行くだけで終わります。

資産番号は、台帳の番号を書いたシールを現物に貼るのがいちばん確実です。テプラでも手書きの養生テープでも構いません。買ったその日に貼れば、翌年の自分が助かります。

会計ソフトを使っていない、または台帳がどこにあるか分からないという場合は、税理士に依頼している会社なら、税理士側で作っている固定資産台帳(別表十六の元になるもの)があるはずです。まずはそれをもらうところから始めてください。ソフトの選び方そのものに迷っている方は、会計ソフトの選び方もあわせてどうぞ。

ステップ2:3つの区分を、台帳の中で分けて持つ

台帳の項目に「区分」を入れておいてほしい、と書きました。理由は、同じ「買った物」でも、台帳の中での扱いが3つに分かれるからです。

金額での分け方そのものは経費か資産か|10万・20万・30万円の判断ラインに詳しく書いたので、ここでは台帳の持ち方に絞って整理します。

通常の減価償却資産

耐用年数にわたって償却していく、いちばん基本の形です。1件ずつ台帳に載せ、毎期償却します。償却資産税の申告対象になります(土地・建物や、自動車税・軽自動車税がかかる車両などは対象外です)。

一括償却資産(取得価額20万円未満)

3年で均等に償却する選び方です。月割りをしないので、期の途中で買っても1年目から3分の1を落とせます。

(180,000円のパソコンを一括償却資産にした場合)
180,000 ÷ 3 = 60,000円 を3年間

1年目 60,000円 / 2年目 60,000円 / 3年目 60,000円

検算します。60,000 × 3 = 180,000。合っています。

台帳では、取得した年度ごとにまとめて1行で持つのがラクです(「令和○年度分 一括償却資産」という持ち方)。

そして、この区分には台帳運用上の大事な特徴が2つあります。

2つ目は見落としやすいところです。詳しくは固定資産を売った・捨てたときの仕訳に書きました。

少額減価償却資産の特例(取得価額30万円未満)

中小企業者等が使える特例で、30万円未満のものをその年に全額費用にできます。年間の合計額に上限(300万円)があり、適用できる事業年度も決まっています。

(25万円のパソコンを何台まで特例で落とせるか)
250,000 × 12台 = 3,000,000円 → ここまで
13台目からは、通常の減価償却または一括償却で処理する

こちらも検算しておきます。25万 × 12 = 300万。上限ちょうどです。

この区分の注意点は1つだけ、しかし重要です。

少額減価償却資産の特例で全額費用にした資産も、償却資産税の申告対象になります。

会計上は費用にして終わったつもりでも、物としては会社にあるからです。ここが一括償却資産との一番の違いで、実務でも混同されやすいところです。だから台帳から消してはいけません。費用にしたあとも、台帳には「少額特例」の区分で残しておいてください。

なお、この特例には適用期限があり、これまで何度か延長されてきました。従業員数などの要件もあります。自社が使えるかどうかと現在の期限は、国税庁のタックスアンサー(No.5408)か顧問税理士に確認してください。ここは年度によって変わるところです。

区分ごとの扱いを、表にまとめておきます。

区分費用にする方法台帳に載せる償却資産税の申告
10万円未満買った年に全額載せなくてよい対象外
一括償却資産(20万円未満)3年で均等年度ごとに1行対象外
少額特例(30万円未満)買った年に全額1件ずつ残す対象
通常の減価償却資産耐用年数で償却1件ずつ対象

10万円未満のものは台帳に載せなくて構いませんが、パソコンやタブレットのように「持ち出される物」は、別の管理リストを作っておくと、退職時の返却確認がラクになります。台帳とは別の、ただの一覧で十分です。

ステップ3:年1回、現物と突き合わせる

ここが本番です。とはいえ、身構えなくて大丈夫です。在庫の実地棚卸と同じことを、固定資産でやるだけです。

やり方は、この順番です。

1. 台帳を場所ごとに並べ替えて印刷する

「設置場所」で並べ替えます。本社2階が12件、A倉庫が8件、というふうに分かれれば、あとは歩く順番が決まります。

2. 場所ごとに、あるかどうかだけ見て回る

台帳の紙を持って歩き、ある物にチェックを入れるだけです。状態の評価も、価値の判断も、この場ではしません。「ある/ない」の2択に絞るのが、終わらせるコツです。

3. チェックがつかなかった行を集める

残ったのが、候補です。この時点ではまだ「幽霊資産」と決まったわけではありません。次の3つのどれかです。

4. 現場に聞く

「このシーラー、どうなりましたか」と聞くだけです。だいたい、その場で答えが返ってきます。

5. 除却の処理をする

「もう無い」と確定したものを、除却として計上します。仕訳と消費税の扱いは固定資産を売った・捨てたときの仕訳にまとめてあります。

ここで一つだけ、気をつけたいところがあります。「いつ捨てたか」が分からないケースです。

過去の期に捨てていたものを今期の除却として処理してよいかは、金額の大きさや状況によって扱いが変わります。金額が大きいときは、自己判断で入れずに顧問税理士に相談してください。 少額であれば、気づいた期に処理して経緯をメモに残しておく形が実務では多いところです。

現物合わせの進め方そのものは、棚卸(実地棚卸)の進め方の考え方がそのまま使えます。在庫と同じ日にやってしまうのも一つの手です。

ステップ4:来年もずれないように、道を1本つくる

現物合わせが終わったら、同じことが来年また起きないようにしておきます。

やることは、たった1行のルールです。

「固定資産を処分するときは、処分する前に経理へ一報を入れる」

これを、社内のどこかに書いておくだけです。朝礼で言う、社内チャットに固定する、備品の棚に貼る。形式は何でも構いません。

とはいえ、口頭のルールは忘れられます。もう少し確実にしたいなら、産廃の引き取りや粗大ごみの手配を経理が通る形にしておくと、自然に情報が入ってきます。処分にはたいてい費用がかかるので、支払いの承認を経由させれば、それが実質的な連絡になります。

もうひとつ、買ったときに「資産番号シールを貼る」まで含めて1セットにしておくと、翌年の現物合わせが劇的にラクになります。台帳に登録して終わりにせず、シールを貼るところまでを手順書に書いておいてください。経理の手順書づくりは経理の年間スケジュールひとり経理の業務ルーティンの整理とあわせてどうぞ。

台帳がそろうと、決算と1月がラクになる

整えた台帳は、年に2回、はっきり効いてきます。

決算のとき

減価償却費が確定し、貸借対照表の固定資産の残高と台帳が一致します。税理士に渡す資料としても、台帳がそろっていれば質問のやりとりが減ります。決算前の段取りは決算までにやることを逆算する決算前に税理士へ渡す資料の準備に整理してあります。

1月の償却資産税の申告

毎年1月1日時点で所有している償却資産を、1月31日までに資産の所在する市区町村へ申告します(1月31日が土日祝にあたる年は、翌開庁日が期限になります)。このとき使うのが、まさに固定資産台帳です。

台帳に区分が入っていれば、「一括償却資産を除き、少額特例の分は含める」という抜き出しが、その場でできます。区分が入っていないと、1件ずつ取得価額を見て仕分ける作業が発生します。

なお、課税標準額の合計が150万円未満のときは償却資産税はかかりません(免税点)。ただし、免税点未満でも申告書の提出を求められるのが一般的です。取扱いは市区町村ごとに案内が異なるので、届いた申告書の説明を確認してください。

そして、台帳が整っているという状態は、税務調査の準備のときにもそのまま効きます。聞かれてから探すのと、開けば載っているのとでは、かかる時間が違います。

台帳のデータそのものの保存について

最後に、ひとつだけ。

固定資産台帳は、帳簿のひとつです。会計ソフトで作っている場合も、Excelで作っている場合も、保存が必要な帳簿として扱われます

Excelで管理している場合、ファイルが個人のPCのデスクトップにだけあるという状態は避けたいところです。共有フォルダかクラウドに置いて、年度末のファイルは別名で残しておく。それだけで、引き継ぎのときの不安がひとつ減ります。

今日のチェックリスト

明日やること(まず1つだけ)

全部を今日やろうとすると、それだけで一日が終わります。明日やることは、ひとつで十分です。

固定資産台帳を開いて、「設置場所」の列があるかどうかだけ見る。

無ければ、列を1つ足してください。中身は空のままで構いません。

そのうえで、思い出せるものだけ書いていきます。「本社2階」「A倉庫」「営業車」。10件でも5件でも構いません。全部埋まらなくて大丈夫です。

それだけで、次に現物合わせをするときのスタート地点が変わります。 何も書いていない台帳と、半分だけ埋まった台帳とでは、着手のハードルがまったく違うからです。

余力があれば、そのとき「これ、もう無いかも」と思った行に付箋の色を1つ付けておいてください。決算前のあなたが、そこから始められます。

最後に

台帳と現物がずれていたことに気づくと、少し落ち込むかもしれません。「ずっと間違ったまま申告していたのか」と思ってしまうかもしれません。

でも、思い出してみてください。あなたは、開いて、見比べて、気づきました。

固定資産台帳は、開かなくても決算は回ります。ソフトが償却額を計算してくれるので、中身を確かめなくても数字は出てきます。だから、ずれたまま何年も過ぎている会社は、めずらしくありません。

整理し終えた固定資産台帳の一覧を前に、肩の力が抜けた表情で顔を上げているひとり経理の担当者

そこを開いたということは、数字の向こうに実物があることを、ちゃんと知っているということです。台帳は書類の山ではなく、会社が持っている物のリストだと分かっている人でなければ、倉庫を思い浮かべたりしません。

一度に全部そろえなくて大丈夫です。今日は列を1つ足すだけ。来年の現物合わせで、また1つ減らす。

台帳は、完璧にする帳簿ではなく、少しずつ現実に近づけていく帳簿です。 今日ひとつ近づいたなら、それで十分に前へ進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。減価償却の方法、少額減価償却資産の特例の要件・上限・適用期限、償却資産税の申告や免税点の取扱いは、制度改正や個別の事情、市区町村によって変わります。最終的な判断は、国税庁の最新の情報や、顧問税理士・所轄税務署・資産の所在する市区町村にご確認ください。

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