決算書の貸借対照表と税理士から届いた申告書を机に並べ、「未払法人税等」と「納税充当金」の違いに戸惑っているひとり経理の担当者

未払法人税等と納税充当金|決算での計上から納付までの仕訳

決算が終わって、税理士から申告書一式が届く。ページをめくっていくと、見慣れない言葉が出てきます。納税充当金

決算書のほうには、そんな科目はありません。あるのは「未払法人税等」。似ているような、違うような。「これは別の何かを計上しないといけないんだろうか」と、手が止まってしまう——ひとりで経理を回していると、こういう小さな引っかかりを聞ける相手がいなくて、そのまま抱えてしまいますよね。

先に安心してほしいのですが、未払法人税等と納税充当金は、同じものを別の場所から呼んでいる名前です。新しく何かを計上する必要はありません。この記事では、決算で税金をどう計上して、翌期にどう消していくのか。中間納付があるとき、赤字のとき、金額がズレたとき。順番に一緒に整理していきます。

結論:やることは「計上して、翌期に消す」の2つだけ

急いでいる方のために、先に結論をまとめます。

  1. 決算で計上する:確定した年税額のうち、まだ納めていない分を 未払法人税等 として負債に計上する。
  2. 翌期に納付して消す:納付書で払ったときに 未払法人税等 を取り崩して、残高をゼロにする。
  3. 納税充当金は、その未払法人税等を税務側から呼んだ名前。申告書(別表)の中だけで使われる言葉なので、会計の仕訳が増えるわけではない。

大きく言えば、これだけです。つまずきやすいのは「中間納付をしているとき」と「赤字なのに残高が残るとき」なので、そこは後で丁寧に見ていきます。

いま何が起きているか:会計と税務で、呼び名が2つある

まず、なぜ名前が2つあるのかを整理しておきましょう。ここが腑に落ちると、あとの話がずっと楽になります。

会社の決算は、実は2つの立場から見た書類を作っています。

同じ「これから納める税金」を指しているのに、書類の目的が違うので、呼び名も別々に育ってきた——ざっくり言えば、それだけの話です。あなたが何かを見落としているわけではありません。

事業年度の途中に中間納付をし、決算で年税額を確定させ、残りを未払分として翌期に納めるまでの流れを3つの場面で示した図
期中に払った分と、決算で確定した年税額。その差が「未払分」として貸借対照表に残ります。

「未払法人税等」に入るのは何の税金か

科目名が「法人税等」なので法人税だけかと思いきや、中身は複数の税金の合計です。

この4系統のうち、決算日時点でまだ納めていない分を合計したものが 未払法人税等 です。窓口が国と地方に分かれている話は、法人住民税と法人事業税|地方税の申告と納付の段取りで整理しています。

損益計算書のほうでは、これに対応する費用が 法人税、住民税及び事業税 という科目名で、税引前当期純利益のすぐ下に並びます。名前が長いので、ソフトによっては「法人税等」と略されています。

決算のときの仕訳——中間納付があるかで2パターン

ここからが実務です。期中に中間納付をしたかどうかで、決算の仕訳が変わります。

パターン1:中間納付がない場合

一番シンプルな形です。確定した年税額を、そのまま費用と負債に計上します。

年税額が 48万円 だった場合:

借方金額貸方金額
法人税、住民税及び事業税480,000未払法人税等480,000

これで、損益計算書に48万円の費用が乗り、貸借対照表の流動負債に48万円の 未払法人税等 が残ります。

パターン2:中間納付がある場合

前期の税額が一定額を超えると、事業年度の途中で税金を前払いする 中間納付 が発生します(対象になる条件は中間申告・予定納税とは|通知が来たときの進め方へ)。

期中に中間納付をしたとき、多くの会計ソフトでは 仮払法人税等 という資産の科目でいったん受け止めます。

期中(中間納付したとき)——50万円を納付:

借方金額貸方金額
仮払法人税等500,000普通預金500,000

決算時——年税額が120万円と確定:

借方金額貸方金額
法人税、住民税及び事業税1,200,000仮払法人税等500,000
未払法人税等700,000

年税額 1,200,000円 − 中間納付 500,000円 = 700,000円。この残りが 未払法人税等 です。

ポイントは、費用として計上するのは年税額の全額(120万円)だということ。中間で払った50万円は「前払いしていた分」なので、ここで資産から費用へ振り替えて清算します。仮払いの残高を残したまま決算を締めてしまうと、翌期の試算表に正体不明の資産が居座ることになるので、決算整理のときに必ず確認しましょう(→決算整理仕訳のチェックリスト)。

なお、中間納付を 仮払法人税等 ではなく、そのまま 法人税、住民税及び事業税 の費用で処理している会社もあります。その場合は決算で差額の70万円だけを未払計上すれば大丈夫です。どちらの方法でも、最終的な費用も負債も同じ金額になります。自社がどちらでやってきたかは、期中の中間納付の仕訳を1本見れば分かります。

納付したとき(翌期)

申告書を出して、実際に納付書で払ったときの仕訳です。

借方金額貸方金額
未払法人税等700,000普通預金700,000

これで 未払法人税等 の残高がゼロになります。「計上して、翌期に消す」が一周した状態です。

納付の期限は、原則として事業年度が終わった日の翌日から2か月以内。3月決算なら5月末日です。法人税・地方法人税は税務署へ、住民税・事業税は都道府県や市区町村へと納め先が分かれるので、納付書は複数枚になります(→申告期限と納付の段取り)。

納税充当金は「税務側の呼び名」

ここで、最初の疑問に戻ります。

税理士から届いた申告書の中に、別表五(二)「租税公課の納付状況等に関する明細書」という書類があります。その下のほうに「納税充当金の計算」という欄があって、期首残高・繰入額・取崩額・期末残高が並んでいるはずです。

この 納税充当金の期末残高が、決算書の 未払法人税等 の残高と一致します。数字を見比べてみてください。同じ金額のはずです。

つまり、納税充当金とは——

「同じものだった」と分かるだけで、申告書のページをめくる手が少し軽くなると思います。

なぜ税務側でわざわざ追いかけるのか

もう一歩だけ踏み込むと、理由は税金の一部が経費にならないからです。

会計では年税額をまるごと費用に計上しますが、税務では上のルールで計算し直す必要があります。そこで別表四という書類で、会計で費用にした納税充当金をいったん足し戻し、事業税は実際に納付した年度に差し引く、という調整をしています。

この調整は税理士が申告書上で行うもので、会計の仕訳としてやることはありません。「決算書と申告書で税金の扱いがズレるのは、もともとそういう仕組みだから」——それが分かっていれば大丈夫です。会計と税務のズレを会計側でも表現する 法人税等調整額 という論点もありますが、そちらは税効果会計の仕訳で別に整理しています。

つまずきやすい4つのところ

現場で「あれ?」となりやすいポイントを、先回りして挙げておきます。

1. 赤字なのに未払法人税等が残る

赤字決算なのに 未払法人税等 がゼロにならない。これは間違いではなく、法人住民税の均等割は、赤字でもかかるためです。

金額は自治体や会社の規模で変わりますが、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の会社なら、標準税率で年7万円ほど(道府県民税2万円+市町村民税5万円)が目安です。超過税率を採用している自治体もあるので、正確な金額は納付書か、自治体の税務担当の案内で確認してください。

赤字決算の年は、未払法人税等 の残高がこの均等割の金額だけになっているか——ここを見ると、計上が合っているかの手がかりになります。

2. 消費税を混ぜてしまう

未払法人税等 に消費税は入れません。消費税の未納分は 未払消費税等 という別の科目で管理します。税抜経理なら、仮受消費税と仮払消費税を相殺した差額が未払消費税等になります。

同じ「これから納める税金」でも科目を分けるのは、性質がまったく違うからです。法人税等はもうけにかかる税金、消費税は預かって納める税金。決算書を見る人にとっても、この2つは別々に見えていたほうが分かりやすいのです。

3. 預り金と混ぜてしまう

給与から天引きした源泉所得税や住民税の特別徴収は、預り金 です。これも 未払法人税等 には含めません。会社が負担する税金ではなく、従業員から預かって代わりに納めるお金だからです(→源泉所得税の納期の特例)。

「未払法人税等・未払消費税等・預り金」——BSの負債側に並ぶこの3つは混ざりやすいので、月次のたびに残高の意味を言えるか確かめておくと安心です(→貸借対照表の見方)。

4. 計上額と実際の納付額が少しズレる

決算で計上したあとに税理士側で最終計算が動いて、実際の納付額が数百円〜数千円ずれることがあります。そうすると、翌期に納付しても 未払法人税等 に端数が残ったり、逆に足りなくなったりします。

少額であれば、翌期の 法人税、住民税及び事業税租税公課 で調整するのが実務的な扱いです。ただし金額が大きいときや、毎期のように大きくズレるときは、原因を顧問税理士に確認しましょう。計上のもとにした数字が違っている可能性があります。

(参考)中間納付が多すぎたとき

年税額より中間納付額のほうが多かった場合は、差額が戻ってくるので、負債ではなく資産に計上します。

年税額40万円・中間納付50万円のケース:

借方金額貸方金額
法人税、住民税及び事業税400,000仮払法人税等500,000
未収還付法人税等100,000

借方合計 400,000+100,000 = 500,000円で、貸方と一致します。実際に還付された日に 未収還付法人税等 を取り崩します。なお還付金に上乗せされる還付加算金は、雑収入として別に受け止めます。

明日やること(まず1つだけ)

全部を一度に整えなくて大丈夫です。明日、これだけやってみてください。

会計ソフトで貸借対照表を開いて、未払法人税等 の残高を見る。

見るのは1点だけです。すでに納付を済ませた事業年度の分が、まだ残っていないか。

1分で終わります。もし何か残っていても、見つかった時点で直せます。

未払法人税等 チェックリスト

決算と納付のタイミングで、上から順に確認してください。

決算のとき

納付のとき

申告書が届いたとき

最後に

税金の科目は、経理の仕事の中でもとくに「自分で決められない」領域です。金額は税理士の計算で決まり、名前は法律で決まっていて、こちらにできるのは、正しく受け止めて、正しく消していくことだけ。

だからこそ、書類の中に知らない言葉がひとつ出てくるだけで、急に足元がぐらつく感じがするのだと思います。「自分の理解が足りないから、この会社の決算は危ういのでは」と、夜に一人で申告書をめくったことがある方も少なくないはずです。

納付を終えて残高がゼロになった帳簿を確認し、窓の外の朝の光を見ながら穏やかな表情で息をついているひとり経理の担当者

でも、思い出してみてください。今日わかったことは、結局とてもシンプルでした。計上して、翌期に消す。名前が2つあるだけで、モノはひとつ。

そして、納税充当金という言葉に引っかかって調べたということは、申告書をちゃんと読もうとしているということです。届いた書類をそのまま棚にしまう人もいる中で、あなたは中身を確かめようとした。それは、会社のお金を預かる人として、十分に誠実な向き合い方だと思います。

決算の税金は、年に一度しか回ってきません。年に一度しかやらないことを、覚えていられなくて当たり前です。次にこの言葉が出てきたとき、また確かめればいい。そのために、こうして書いたものが残っています。

本記事は一般的な実務情報です。税額の計算、損金算入の可否、均等割の金額、申告・納付の期限や延長の取扱いは、会社の規模・所在地・個別の事情や制度改正によって異なります。最終的な判断は、国税庁・各自治体の最新の情報や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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