廃棄した機械の処理証明書を手に、固定資産台帳を開いて処分の仕訳をどう入れるか考えているひとり経理の担当者

固定資産を売った・捨てたときの仕訳|除却損と売却損益の出し方

「この古いコピー機、先週処分したんだった……。えっと、これって仕訳、どうするんだっけ」 固定資産台帳を開いたまま、手が止まる。毎月の記帳ならもう体が覚えているのに、資産を手放す処理だけは年に数えるほどしか出てこない。そのたびに、去年の自分がどう入れたかを探しに行く——ひとりで経理を回していると、この時間は本当に身近ですよね。

でも、ここで迷うのは、あなたが忘れっぽいからではありません。固定資産を手放す処理は「売ったのか、捨てたのか」で行き先が変わり、しかも消費税の扱いまで枝分かれするから、年に数回では手になじまなくて当たり前なのです。

この記事では、処分の仕訳を「帳簿価額」という1本の軸で整理します。今日は全部を覚えなくて大丈夫。まずは「資産を手放したら、どの順番で考えればいいか」という道順を一緒に作っていきましょう。

結論:固定資産を手放したときは、①期首から処分した月までの減価償却をまず計上して「そのときの帳簿価額」を確定させる → ②捨てた(除却)なら帳簿価額をそのまま固定資産除却損へ、売った(売却)なら売却価額と帳簿価額の差額を固定資産売却益または固定資産売却損、という順で考えると迷いません。消費税は、売却は課税取引(課税売上になるのは「売却益」ではなく「売却価額の全額」)廃棄そのものは対価がないので課税対象外、という分かれ方をします。なお一括償却資産(3年均等償却を選んだ資産)は、途中で処分しても除却損を計上できない点だけ、先に頭の隅に置いておいてください。

まず、「売った」のか「捨てた」のかを分ける

固定資産を手放す場面は、現場ではだいたいこの2つに分かれます。

同じ「もう会社にない」でも、お金が入ってきたかどうかでその後の処理が変わります。だから、書類を見たらまず「これは代金を受け取った話か、そうでないか」を確認してください。ここさえ分ければ、あとは同じ流れです。

なお、下取りは少し紛らわしいのですが、これは「売却」の仲間です。新しい資産の値引きに見えても、実務では下取り価額で古い資産を売却したものとして処理し、新しい資産は値引き前の本体価額で登録するのが基本の考え方になります。

次に、「そのときの帳簿価額」を確定させる

売却でも除却でも、計算の起点になるのは手放した時点の帳簿価額です。ここを先に出しておくと、あとの仕訳は自動的に決まります。

期中の減価償却で帳簿価額を確定させたあと、捨てたなら除却損、売ったなら売却損益へ分かれる処理の流れを示した図
まず期中の償却で帳簿価額を出す。そこから「捨てた」「売った」の2つに分かれる

帳簿価額とは、取得価額から、これまで計上してきた減価償却費を差し引いた残りのこと。固定資産台帳を開けば、期首時点の金額が載っています。

ここでひとつだけ手間があります。期の途中で手放した場合、期首からその月までのぶんの減価償却費を先に計上してから、帳簿価額を確定させるのが実務の基本です(月割りで計算します)。

たとえば、取得価額100万円のコピー機(耐用年数5年・定額法で年20万円の償却)を3年使い、4期目の9月末に処分したとします。決算期は3月末です。

まずこの仕訳を入れます。

借方金額貸方金額
減価償却費100,000工具器具備品100,000

これで、台帳上のこのコピー機は30万円になりました。ここからが本番です。

会計ソフトによっては、固定資産台帳で「除却」「売却」の登録をすると、期中の償却費と処分の仕訳をまとめて自動で作ってくれるものもあります。その場合は、自分で二重に入力しないよう、まず台帳側の登録から進めてください。

捨てたとき(除却)の仕訳

廃棄した場合、その資産から今後お金が入ってくることはありません。だから、残っていた帳簿価額をそのまま損失に振り替えます。これが固定資産除却損です。

借方金額貸方金額
固定資産除却損300,000工具器具備品300,000

シンプルですよね。「帳簿に残っていた30万円ぶんの価値を、使い切らないまま手放した」という記録です。

処分にあたって撤去費用や廃棄費用を払った場合は、その費用も除却にともなって発生したものとして、除却損に含めて処理するのが一般的です(金額が小さければ雑費などで処理している会社もあります。どちらでも、社内で扱いをそろえておくことが大切です)。

借方金額貸方金額
固定資産除却損20,000現金預金22,000
仮払消費税等2,000

(税抜経理・廃棄費用22,000円=税抜20,000円+消費税2,000円の場合)

なお、スクラップとして少しでも代金を受け取ったなら、それは売却が混ざっている状態です。受け取った金額を雑収入または売却として処理し、消費税も課税売上として扱います。「捨てた」つもりでも、お金が動いたら一度立ち止まってください。

廃棄した「証拠」を残しておく

除却は、帳簿の上では損失が立つ処理です。だからこそ、本当に処分したことがあとから確認できる資料を残しておくと安心です。難しいことをする必要はありません。

これらをその年度のフォルダにまとめておくだけで、税務調査の場面でも、決算前に税理士から聞かれたときにも、すぐ答えられるようになります。

売ったとき(売却)の仕訳

売却は、受け取った金額と帳簿価額を比べるだけです。

先ほどのコピー機(帳簿価額30万円)を例に、税抜経理で見てみましょう。

損が出るケース:税抜20万円(税込22万円)で売った

帳簿価額30万円のものを20万円で売ったので、差額10万円が売却損です。

借方金額貸方金額
現金預金220,000工具器具備品300,000
固定資産売却損100,000仮受消費税等20,000

(借方合計320,000円=貸方合計320,000円)

益が出るケース:税抜40万円(税込44万円)で売った

帳簿価額30万円のものを40万円で売ったので、差額10万円が売却益です。

借方金額貸方金額
現金預金440,000工具器具備品300,000
仮受消費税等40,000
固定資産売却益100,000

(借方合計440,000円=貸方合計440,000円)

どちらも、貸方に帳簿価額をそのまま載せて資産を台帳から消すのは同じ。変わるのは差額の行き先だけです。ここが分かると、売却の仕訳は一気に楽になります。

消費税の扱いは、ここだけ気をつける

処分の処理でいちばん間違えやすいのが、消費税(=商品やサービスの取引にかかる税)の扱いです。ポイントは3つだけです。

1. 売却は課税取引。課税売上になるのは「売却価額の全額」

事業として使っていた資産を売る行為は、消費税の課税の対象になります。ここで多いのが、損益計算書に載る「売却益10万円」を課税売上だと思ってしまう間違いです。消費税の計算のもとになるのは、あくまで受け取った売却価額(上の例なら税抜40万円、あるいは20万円)のほうです。売却損が出たときでも、売却価額に対して消費税はかかります。

会計ソフトで売却の仕訳を入れるときは、固定資産売却益の行ではなく、売却価額の全体に課税売上の税区分がついているかを確認してみてください。ここは消費税の税区分の入力でとくに間違えやすいところです。

2. 廃棄そのものは、対価がないので課税対象外

捨てただけなら、誰からもお金を受け取っていません。消費税は「対価を得て行う取引」にかかるものなので、除却損には税区分をつけません(不課税)。

3. 撤去費用・廃棄費用の支払いは、課税仕入

業者に払った処分費用は、通常どおり課税仕入として処理します。「除却は不課税だから費用も不課税」と流してしまわないよう、支払い側は分けて考えてください。

つまずきやすい3つのポイント

ここまでが基本の流れです。最後に、ひとり経理が実際に手を止めやすい3つを押さえておきましょう。

1. 一括償却資産は、処分しても除却損を出せない

取得価額が20万円未満の資産で一括償却資産(3年間で均等に償却する方法)を選んだものは、途中で捨てても売っても、その時点で残りを除却損にはできません。処分後も、当初どおり3年間の均等償却を続けていきます。

これは知らないと必ずつまずくところです。「もう会社にないのに、まだ償却が残っている」という状態は、間違いではなく仕様なのだと思ってください。処分した記録だけは台帳のメモ欄に残しておくと、翌年の自分が混乱せずに済みます。

一方、中小企業者等の少額減価償却資産の特例(30万円未満のものを取得した年に全額費用にできる制度。適用には要件・期限があります)を使ったものは、すでに帳簿価額が残っていないため、処分しても仕訳は不要です。金額による扱いの違いは経費か資産か|10万・20万・30万円の判断ラインもあわせて見てみてください。

2. まだ捨てていないけれど、もう使わない資産(有姿除却)

「倉庫の奥で眠っているけれど、処分費用が出せなくてまだ捨てられていない」——現場ではよくある話です。

法人税の取扱いでは、使用をやめて今後その資産を事業に使う可能性がないと認められる場合には、実際に廃棄していなくても除却損を計上できる方法(有姿除却)が認められています。ただし「今後使う可能性がない」といえるかどうかは判断がいるところで、単に稼働していないだけでは足りません。

該当しそうな資産が思い当たったら、自分で結論を出さずに、状況をメモして税理士に相談するのが安心です。決算前に税理士へ渡す資料をそろえるタイミングで、一緒に聞いてみるとスムーズです。

3. 償却資産の申告(固定資産税)の減少報告を忘れない

会計と別に、市区町村へ提出する償却資産の申告があります。毎年1月1日時点で所有している償却資産を、原則1月31日までに申告するものです。

期中に処分した資産は、この申告で減少した資産として報告しないと、もう手元にないものに対して固定資産税がかかり続けてしまいます。処分の仕訳を入れたその日に、「償却資産申告の減少にも入れる」と台帳のメモや年間スケジュールに書き添えておくと、年明けの自分が助かります。

固定資産を処分したときのチェックリスト

書類が回ってきたら、上から順に確認してみてください。

明日やること(まず1つだけ)

全部を今日覚えようとすると、それだけで疲れてしまいます。 明日やることは、「固定資産台帳を開いて、実物がもう社内にない資産がないか、上から目で追ってみる」だけで十分です。

もう見当たらない機械、何年も使っていないパソコン、去年入れ替えたはずの設備。1つでも見つかったら、その行に印をつけて「いつ・どうやって手放したか」を思い出せる範囲でメモする。処理はそのあとで大丈夫です。台帳と現物のズレを見つけた時点で、決算前に慌てる作業がひとつ減っています。

最後に

固定資産の処分は、年に何度もない仕事です。だから毎回、去年の仕訳を探しに行って、税区分で悩んで、「これで合っているのかな」と確かめながら入力する。地味で、時間がかかって、誰にも見えにくい作業ですよね。

固定資産台帳の処分の登録を終えて、台帳と現物がそろった手応えに落ち着いた表情のひとり経理の担当者

でも、やることの順番は今日はっきりしました。帳簿価額を出す。捨てたのか売ったのかで行き先を決める。消費税は売却価額で見る。この3つを押さえておけば、次に処分の書類が回ってきたとき、手は止まりません。

台帳と現物がそろっている会社は、それだけで決算がずいぶん静かになります。今日、道順がひとつ頭に入ったなら、それはもう「固まる作業」が「進められる作業」に変わり始めた証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日できたところまでで、十分前に進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。税務・会計の取扱いは個別の事情や最新の通達によって異なります。制度の要件や適用期限は改正されることもあるため、最終的な判断は国税庁の情報や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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