
減価償却の基本|定額法・定率法と耐用年数の調べ方
「15万円のパソコン、資産になるのは分かった。でも、ここから何年に分けて、いくらずつ費用にすればいいの……?」 固定資産として入力したところまでは進んだのに、その先で手が止まる。定額法、定率法、耐用年数、月割り——言葉だけが頭の上を通り過ぎていって、結局どれを使えばいいのか分からなくなる。ひとりで経理を回していると、この「資産にしたあとの迷い」は本当に身近ですよね。
でも、ここで身構えるのは、あなたが勉強不足だからではありません。減価償却は、「どの方法で」「何年かけて」「いつから」という3つの軸が同時に出てくるから、最初は誰でも複雑に感じます。しかも決算の数字に直結するので、慎重になるのはむしろ正しい感覚です。
この記事では、減価償却の全体像を、判断の順番に沿って一つずつほどいていきます。今日は全部を完璧に計算できるようになる必要はありません。まずは「減価償却って、結局こういう仕組みなんだ」という地図を頭に入れて、決算前に慌てない準備を一緒に整えていきましょう。資産にするかどうかの金額ラインそのものに迷うときは、先に経費か資産か|10万・20万・30万円の判断ライン早わかりを見ておくと、この記事がぐっと分かりやすくなります。
結論:減価償却は、次の順で考えると迷いが減ります。①その資産が減価償却の対象かを確かめる(土地や10万円未満のものは対象外)。②耐用年数を国税庁の表で調べる。③会社で決めた償却方法(定額法・定率法)で1年分の費用を計算する(方法は資産区分ごとに会社の届出で決まる)。④期の途中で使い始めたものは月割りで按分する。中小企業の特例(10・20・30万円)も使える場合があるので、迷う資産や高額な資産は顧問税理士と確認しましょう。
そもそも減価償却とは(10秒でつかむ全体像)
細かい計算に入る前に、考え方の根っこだけ押さえておきましょう。ここが腑に落ちると、後の話が一気に分かりやすくなります。
長く使う高い物(パソコン、車、機械、応接セットなど)は、買った1年だけで使い切るわけではありません。何年もかけて会社の役に立ちます。そこで税のルールでは、「買った金額を、使う年数で割って、少しずつ費用にしていく」という考え方をとります。これが減価償却です。
たとえば60万円の機械を6年使うなら、ざっくり1年あたり10万円ずつ費用にしていくイメージです。買った年に60万円まるごと費用にするのではなく、使う期間に合わせて費用を分けることで、その年その年の利益(=もうけ)を実態に近づける——これが減価償却の目的です。
つまり減価償却は、読者を困らせるための難しいルールではなく、「高い物の費用を、使う年数に合わせて公平に分ける」ための仕組みなのです。
ステップ1:そもそも減価償却するものか確かめる
入力で手が止まったら、まず「これは減価償却が必要な資産か」を確認します。ここを最初に切り分けると、ムダに悩まずに済みます。
減価償却の対象になるのは、ざっくり言うと「事業で使う」「長く使える(おおむね1年以上)」「金額が一定以上(原則10万円以上)」の3つを満たすものです。代表例はパソコン、車両、機械、工具、応接セット、建物などです。
一方で、次のようなものは減価償却の対象になりません。
- 10万円未満のもの … その年の費用(消耗品費など)にできます。
- 土地 … 使っても価値が減らないと考えるため、償却しません。
- 使用していない(事業に使っていない)もの … 使い始めて初めて償却が始まります。
- 棚卸資産(販売用の在庫) … 売ったときに原価になるもので、償却の対象ではありません。
「これは償却するもの?」と迷ったら、まず金額(10万円以上か)と長く使うかを確認する——この順番が、最初の分かれ道です。
ステップ2:耐用年数を調べる
減価償却する資産だと分かったら、次は何年で費用にしていくか=耐用年数を調べます。耐用年数は自分で自由に決めるものではなく、資産の種類ごとに国の表(法定耐用年数)で決まっています。

よく出てくる資産の目安は、次のとおりです(一般的な例で、用途や構造により変わります)。
| 資産の種類 | 法定耐用年数の目安 |
|---|---|
| パソコン(電子計算機) | 4年 |
| 一般的な事務机・いす(金属製) | 15年 |
| 軽自動車 | 4年 |
| 普通自動車(一般的なもの) | 6年 |
| 冷暖房・空調設備 | 6〜15年程度 |
| 看板・広告塔 | 3〜20年程度 |
調べ方の手順はシンプルです。
- その資産が「どの種類(器具備品・車両・建物附属設備など)」に当たるかを考える。
- 国税庁の「耐用年数(省令別表)」や、検索で出てくる耐用年数表で、その種類の年数を確認する。
- 似た用途が複数あって迷うときは、自己判断で決め打ちせず印をつけて、税理士に確認する。
迷いやすいのが「建物附属設備」と「器具備品」の境界です。空調・照明・内装(間仕切り・天井・床仕上げ等)など、建物に恒久的に付随して機能するものは附属設備に寄ることが多く、持ち運び可能で独立して使えるものは器具備品寄りです。現場運用としては、迷ったらいったん附属設備寄りで印をつけて「要・税理士確認」としておくと安全です。
中古で買った資産は、耐用年数の短縮ルールが絡みます。安易に自己判断はせず、会計ソフトの固定資産登録で「中古資産」設定の有無を確認し、詳細な年数の決め方はソフトの計算または税理士に委ねる方針にしておくと手戻りを防げます(式は公式情報で確認)。
ステップ3:償却方法を決める(定額法と定率法の違い)
耐用年数が分かったら、次はどのペースで費用にしていくか=償却方法です。代表的なのが「定額法」と「定率法」の2つです。

定額法:毎年おなじ額で費用にする
定額法は、取得価額をもとに、毎年ほぼ同じ金額を費用にしていく方法です。計算がシンプルで分かりやすく、費用が平らに並ぶのが特徴です。
1年分の償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
率の拾い方(早見):おおむね「1 ÷ 耐用年数」
たとえば取得価額120万円・耐用年数6年なら、定額法の償却率は0.167(1÷6年)なので、1年あたり約20万円(120万円×0.167)を6年かけて費用にしていくイメージです。率の出所は、会計ソフトの固定資産設定または国税庁の償却率(公式情報で確認)で確認します。
定率法:最初に多く、だんだん減らしていく
定率法は、まだ費用にしていない残り(未償却残高)に一定の率をかける方法です。最初の年の費用がいちばん大きく、年々小さくなっていきます。
1年分の償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率
率の拾い方(早見):国税庁の償却率表または会計ソフトの自動設定を使用(公式情報で確認)
早めに多く費用にできる一方、計算は定額法より少し複雑になります。実務では、ソフトの自動計算に任せるのが安全です。
どちらを使う?(ここは思い込みで決めない)
重要:償却方法は「資産区分ごと(建物・建物附属設備・機械装置・器具備品など)」に会社の届出で決まります。個別資産ごとに毎回自由に選ぶものではありません。 社内の前提を確認するには、次のいずれかを当たるのが確実です。
- 前年の法人税申告書「別表十六(一)(二)」で方法の記載を確認
- 「減価償却方法の届出書」の控え
- 会計ソフトの固定資産マスタ設定(資産区分ごとの方法)
「定額法と定率法、どっちがお得か」を都度判断するより、自社の区分ごとの既定の方法に合わせる——これが現場で間違えないコツです。
ステップ4:期の途中で買ったら「月割り」する
ここはうっかり間違えやすい落とし穴です。減価償却費は、事業で使い始めた月から期末までの月数で按分します(月割り)。年の途中で買った資産を、まるまる1年分の費用にしてしまうと、金額がずれてしまいます。
その年の償却費 = 1年分の償却費 × (使い始めた月から期末までの月数 ÷ 12)
たとえば3月決算の会社が、1年分の償却費が12万円になる資産を12月に使い始めた場合、その期に使ったのは12月〜3月の4か月分なので、12万円 × 4 ÷ 12 = 4万円がその期の償却費になります。残りは翌期以降に続いていきます。
「いつ買ったか」ではなく「いつ使い始めたか(事業に使った月)」で数える点に注意しておくと、ここでのズレを防げます。
減価償却しなくてよい・簡単にできる特例
ここまで読んで「全部の資産をこんなに丁寧に何年も計算するの……?」と感じたかもしれません。でも、中小企業には負担を軽くする選択肢がいくつか用意されています。どれを選ぶかのミニフローを置いておきます(要件は公式情報で確認)。
- 10万円未満 → 即経費(償却なし)
- 10万円以上20万円未満 → 一括償却資産(3年均等、月割り不要)
- 青色の中小で「30万円未満」かつ「年300万円枠内」 → 少額減価償却資産の特例で即時償却(届出等は公式情報で確認)
- 上記以外 → 通常の減価償却(区分ごとの方法で、月割り)
これらを使えるかは会社の状況によります。「うちは使える前提か」を税理士に一度確認し、使える場合は年内の枠管理だけは早めにメモしておくと、決算前の負荷が軽くなります。
仕訳はどう書く?(直接法・間接法)
計算した償却費を帳簿に反映するときの書き方も、軽く触れておきます。代表的なのは2つです。
- 直接法 … 資産の金額そのものを直接減らす書き方。
例)(借)減価償却費 200,000 /(貸)工具器具備品 200,000
- 間接法 … 資産は減らさず、「減価償却累計額」という別の科目で減った分を積み上げていく書き方。
例)(借)減価償却費 200,000 /(貸)減価償却累計額 200,000
現場の標準は多くが間接法です。迷うときは原則「減価償却累計額」で統一し、会計ソフトの自動仕訳の出力に合わせる運用にすると整合が取りやすくなります(直接法の例は参考として残しておけばOK)。
具体例で通してみる
言葉だけだとイメージしにくいので、一つの資産を最初から最後まで通してみましょう(一般的な定額法の例です)。
- 買ったもの:業務用パソコン 取得価額 240,000円
- 種類・耐用年数:器具備品(電子計算機)→ 4年
- 償却方法:定額法(償却率 0.250=1÷4年)[率は会計ソフト設定または国税庁の償却率で確認]
- 使い始め:3月決算の会社で、10月に使い始めた
1年分の償却費は、240,000円 × 0.250 = 60,000円。 ただし初年度は10月〜3月の6か月分なので、60,000円 × 6 ÷ 12 = 30,000円が初年度の償却費になります。 2年目以降は1年分の60,000円ずつを費用にしていき、最後の年に残りを調整して、4年かけて費用にしていく——という流れです。
こうして1件を最後まで通してみると、減価償却が「魔法の難しい計算」ではなく、順番に当てはめていくだけの作業だと分かってきます。最初の1件さえ通せれば、2件目からはぐっと楽になります。
ここを間違えると、何が変わる?
減価償却費は、その年の利益(=もうけ)と税金の計算に直結します。償却費を多く計上すればその年の利益は小さく見え、少なければ大きく見えます。だからこそ、方法(定額法・定率法)・年数(耐用年数)・月割りを取り違えると、決算の数字がずれてしまいます。
ただ、これは「読者ひとりで完璧に当てなければいけない」という話ではありません。むしろ大切なのは、怪しい資産・高額な資産に「確認」の印をつけておくこと。日々の入力の段階で印さえ残しておけば、決算のときに税理士と一緒に整えられます。完璧を最初から目指すより、確認すべき場所が分かっている状態を作るほうが、ずっと現実的で安全です。
減価償却で迷ったときのチェックリスト
時間がない現場向けに、まずは「最低ライン」から。上から順に進めます。
最低ライン(必須4点)
- 対象判定:10万円以上・1年以上使用・事業用か
- 種類を決めて耐用年数を確認(国税庁の表)
- 自社の方法に合わせる:資産区分ごとの届出どおり(定額/定率)
- 期中取得は月割り反映(使用開始月ベース)
優先順位
- 上の4点 → 特例(10・20・30万円)の可否 → 中古資産の取扱い → 税理士確認フラグ付け
代替(時間がないとき)
- 会計ソフトに固定資産登録し、自動償却に任せる。中古・建物附属設備など迷うものは「要確認」タグのみ先行でOK
免除条件(チェックを省ける場面)
- 10万円未満はチェック不要(即経費)
- 年内の30万円特例枠が残っていて対象なら「特例で処理」とし、月割り・方法チェックを省略(要件は公式情報で確認)
- 10–20万円を一括償却にする場合、耐用年数の調査は省略(3年均等)
注意喚起ポイント
- 償却方法は区分ごとの届出で固定。個別資産ごとに都度選ばない
- 率の拾い方:定額法は「1÷耐用年数」、定率法は国税庁の償却率表またはソフトの自動設定
- 中古資産は年数短縮ルールあり。ソフトの「中古資産」設定と税理士確認へ
- 仕訳は原則「減価償却累計額」(間接法)で統一。ソフト出力に合わせる
明日やること(まず1つだけ)
減価償却の全部を今日マスターしようとすると、それだけで気が遠くなります。 明日やることは、「固定資産台帳(または会計ソフトの固定資産一覧)を開いて、資産を1つだけ選び、その耐用年数と償却方法を確認してみる」だけで十分です。
もし「あれ、これ方法が合ってるかな」と少しでも引っかかったら、その場で結論を出さず、付箋やメモに「要確認」と書いておく。それだけで、決算前に慌ててすべてを見直す作業が、確実にひとつ減ります。小さな一歩ですが、未来の自分をちゃんと助けます。
最後に
減価償却は、方法・年数・月割りと、確かめることが多くて、最初は誰でも身構えるテーマです。それをひとりで、ほかの記帳や請求の合間に進めているのは、決して簡単なことではありません。

でも、これは一発で正解を当てる試験ではありません。対象かを確かめ、年数を調べ、方法を選び、月割りする——その順番を一度通せば、もう「何から考えればいいか分からない」状態には戻りません。 今日、減価償却の地図がひとつ頭に入ったなら、それはもう「身構える作業」が「進められる作業」に変わり始めた証拠です。完璧でなくて大丈夫。今日できたところまでで、十分前に進んでいます。
本記事は一般的な実務情報です。税務・会計の取扱いは個別の事情や最新の通達によって異なります。耐用年数・償却方法・特例の要件は改正されることもあるため、最終的な判断は国税庁の情報や、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
決算までの全体の段取りを整えたいときは、ひとり経理の月次決算チェックリストも、ほかの決算・申告の手順とあわせて記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。