取引先から受け取った紙の手形と、パソコンに表示されたでんさいの入金予定を見比べ、期日を確かめているひとり経理の担当者

受取手形・でんさいの基本処理|紙の手形が減る今の実務

取引先から「支払いは手形で」と言われて受け取った一枚。あるいは、いつのまにか「でんさいで」と切り替わっていた入金。 「これ、どう記帳するんだっけ」「お金はいつ入るんだろう」「期日を過ぎたらどうなる?」——受取手形やでんさい(電子記録債権)を前に、手が止まってしまうこと、ありますよね。

ひとりで経理を回していると、日々の振込入金には慣れていても、手形やでんさいは登場する回数が少ないぶん、毎回ゼロから思い出す感じになりがちです。しかも近年は紙の約束手形が減り、でんさいや振込へ切り替わる流れが進んでいて、「昔覚えたやり方のままでいいのかな」という不安も重なります。この記事では、受け取る側のひとり経理が押さえておきたい基本を、慌てず順番に一緒に整理していきます。

結論:受け取ったら「①中身を確認 → ②受取手形/電子記録債権として記帳 → ③期日を管理表に登録 → ④期日に入金確認して消し込み」の順で回せば大丈夫です。紙の手形もでんさいも、会計上の考え方(債権としていったん計上し、期日に現金化)は同じ。違うのは、紙は現物管理と取立の手続き・印紙の論点があること、でんさいは電子で完結し期日に自動入金される点です。税務・会計の最終判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

まず、「手形」と「でんさい」は何が違うのか

言葉が似ていて混乱しやすいので、受取側の目線でざっくり整理します。どちらも「今すぐの現金ではなく、決まった期日にお金が入る約束(債権)」という点は同じです。

近年は、政府・全国銀行協会が紙の約束手形の利用を縮小・見直しする方針を示しており、紙の手形から、でんさいや通常の銀行振込へ切り替える取引先が増えています。今はまだ紙の手形も残っていますが、「これから受け取る機会はでんさいのほうが増えていく」くらいの感覚でいると、実務が追いつきやすいです。

受け取ったら、まず中身を確認する

手形・でんさいを受け取ってから消し込むまでを、確認・記帳・期日管理・入金確認の順に並べた流れの図
紙もでんさいも流れは同じ。違うのは「紙は取立が要る」「でんさいは期日に自動入金」の一点

受け取った瞬間にやることは、記帳より先に「中身の確認」です。ここを飛ばすと、期日に入金されなくて慌てる、という事態につながります。

紙の受取手形で見るところ:

でんさいで見るところ:

確認できたら、そのままにせず記帳と期日登録まで一気にやってしまうのが、ひとり経理の取りこぼし防止のコツです。

記帳のしかた(受取時・入金時)

会計の考え方はシンプルで、「売掛金という債権が、手形(またはでんさい)という別の形の債権に変わり、期日に現金になる」だけです。

紙の受取手形の場合

売掛金の回収として手形を受け取ったときは、売掛金を「受取手形」に振り替えます。

借方(左)貸方(右)
受取手形 330,000売掛金 330,000

期日に取立が済んで入金されたら、受取手形を消して普通預金に。

借方(左)貸方(右)
普通預金 330,000受取手形 330,000

(取立手数料が引かれる場合は、その分を支払手数料などで処理します。金額・税区分は社内方針と公式情報で確認を。)

でんさい(電子記録債権)の場合

考え方は手形と同じで、勘定科目を「電子記録債権」として扱うのが基本です。

借方(左)貸方(右)
電子記録債権 330,000売掛金 330,000

期日になると指定口座へ自動入金されるので、入金日に消し込みます。

借方(左)貸方(右)
普通預金 330,000電子記録債権 330,000

会計ソフトによっては専用の「電子記録債権」科目が用意されていることもあれば、売掛金に準じて管理する運用のこともあります。自社の会計ソフトでどの科目・補助科目で管理するかは、顧問税理士がいれば方針を確認しておくと、決算のときに迷いません。

期日を「管理表」に載せて忘れない仕組みに

手形もでんさいも、いちばん怖いのは期日をうっかり忘れることです。特に紙の手形は、期日に取立を依頼しないと自動では入金されません(取立を金融機関に事前依頼しておく運用もあります)。でんさいは自動入金ですが、それでも「いつ・いくら入る予定か」を把握していないと、資金繰りの見通しが立ちません。

そこで、受け取ったらすぐ、簡単な管理表に1行足します。エクセルでもノートでも十分です。

紙の手形は、この管理表と「現物の保管場所」がセットになります。金庫や鍵付きの引き出しなど、決まった場所に必ず戻す。期日が近づいたら取立の準備をする。でんさいは現物がないぶん、管理表と電子債権サービスの画面だけで完結します。

支払管理と同じ発想で「支払期日カレンダー」を作っておくと、受取・支払の両方の資金の動きが一枚で見えて安心です。作り方は買掛金・未払金の支払漏れを防ぐ支払管理表支払サイトと締め日の基本も参考にしてみてください。

「期日前に現金化」もできる(割引・譲渡)

手形やでんさいは期日まで待つのが基本ですが、資金繰りの都合で期日前に現金化する方法もあります。名前だけでも知っておくと、社長から聞かれたときに落ち着いて対応できます。

ただし、割引や譲渡は、もし振出人(支払う側)が支払えなくなったときに自社に支払義務が戻ってくる(遡求)リスクが絡む論点です。実行するかどうかは資金繰りと信用の判断が必要なので、社長・顧問税理士・取引金融機関と相談してから進めるのが安全です。「こういう選択肢がある」と知っておくだけで十分で、ひとりで抱えて即断しなくて大丈夫です。

期日に入金されなかったら(不渡り)

めったにないことですが、期日になっても支払われない「不渡り」というケースもあります。これは相手の資金繰りが行き詰まっているサインで、金額が大きいと自社への影響も大きい論点です。

このときは、ひとりで判断せず、すぐ社長と顧問税理士に共有してください。回収の方法や、貸倒れとしての処理をどう考えるかは、状況によって対応が分かれます。焦って自己流で処理を進めるより、早く相談することが、いちばん自社を守る動きになります。

受取手形・でんさいのチェックリスト

全部を一度にやろうとせず、受け取った1件ずつ、上から順に。

明日やること(まず1つだけ)

いま手元にある(または直近で受け取った)手形・でんさいを1件だけ選び、「金額・支払期日・種類・保管場所」を管理表に1行書き足す。これだけで十分です。記帳や割引の判断は、その1行ができてから順番に。期日が一覧で見えるようになると、「いつお金が入るか」がわかって、資金繰りの不安がひとつ軽くなります。

最後に

手形・でんさいの期日を管理表に整理し終え、入金予定が一覧で見えて安心した表情のひとり経理の担当者

手形やでんさいは、日々の振込に比べて登場が少ないぶん、毎回「どうするんだっけ」と身構えてしまうものです。しかも紙が減ってでんさいへ移り変わる過渡期で、覚え直す負担も重なります。ひとりでその変化を追いかけているのは、けっして楽なことではありません。

でも、やることの芯はずっと同じです。中身を確認して、債権として記帳して、期日を管理表に載せて、入金を確認する。 この4つさえ回せば、紙でもでんさいでも困りません。今日、期日を1行書き留められたなら、それだけでもう「忘れて慌てる」未来をひとつ減らせています。完璧に覚えなくて大丈夫。目の前の1件を、順番に片づけていけば十分前に進めています。

本記事は一般的な実務情報です。税務・会計の取扱いは個別の事情や最新の通達によって異なります。制度・手続きは変更される場合があるため、最新の取扱いは国税庁・全国銀行協会・でんさいネットの一次情報を確認し、最終的な判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

受取・入金まわりの実務は、請求書の発行から入金確認までの基本フロー売掛金の消し込みを正確に行う手順とコツともあわせて、記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。

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