
売掛金の回収が遅れたとき|督促の進め方と催促メールの文例
入金予定日を過ぎたのに、通帳に売掛金が入ってこない。カレンダーを見て「あれ、○○社、まだだ…」と気づいた瞬間、少し胃が重くなること、ありませんか。
督促は、経理の仕事の中でもとくに気が進まないもののひとつだと思います。相手が忘れているだけかもしれないし、うちの請求書に不備があったのかもしれない。強く言って関係を壊したくない。でも、放っておけば資金繰りに響くし、社長にも説明しなければならない——そのあいだで、連絡のタイミングを何度も迷ってしまいますよね。
この記事では、督促を「気合いで乗り切るもの」ではなく、「順番の決まった淡々とした事務」にするための進め方を整理します。そのまま使える催促メールの文例も置いておくので、明日、宛名と金額を差し替えるだけで送れるようにしておきましょう。
結論:督促は、①まず社内で事実確認(本当に未入金か・請求書は届いているか)→ ②入金遅れに気づいたら早めに「やわらかいリマインド」→ ③反応がなければ期日を切った「正式な督促」→ ④それでも動かなければ書面(内容証明郵便)、という順で、段階を上げていくのが基本です。いきなり強い言葉を使わず、最初は「行き違いかもしれませんが」の姿勢で。金額の大きい取引ほど早めに動くほど、静かに解決しやすくなります。法的手続きや時効が絡む判断は、顧問弁護士・顧問税理士にご確認ください。
その前に:督促の前に社内で確認する3つ
連絡する前に、30秒でいいので次の3つを確認しておくと、気持ちがずいぶん楽になります。「こちらのミスだったら気まずい」という不安が、ここでほぼ消えるからです。
- 本当に未入金か:入金はあったのに、振込名義が社名と違っていて消し込めていないだけ、というのはよくあります。まず通帳・入金明細をもう一度見ます。
- 請求書はちゃんと届いているか:送付先メールが古い、担当者が異動した、PDFが迷惑メールに入った——請求書が相手に届いていないケースは意外と多いです。送信履歴を確認します。
- 支払条件・締め日を勘違いしていないか:「月末締め翌々月末払い」なのに翌月末で待っていた、という思い込みがないか。支払サイトと締め日をもう一度見ます。
この3つで「やっぱり相手の未払いだ」と確信できてから連絡すると、口調も自然と落ち着きます。逆に、ここを飛ばして督促してしまい、あとから「うちのミスでした」となると、関係にひびが入りかねません。
段階1:まずは「やわらかいリマインド」(期日+数日)
入金予定日を数日過ぎたら、最初の連絡です。ここでの目的は「催促」ではなく、「行き違いがないかの確認」。相手が単に忘れているだけ、というのがいちばん多いので、責める必要はまったくありません。
メールか、いつも連絡している方法で、こんなトーンで送ります。
件名:【ご確認のお願い】○月分お支払いについて
○○株式会社 ○○様
いつもお世話になっております。△△株式会社の□□です。
○月○日をお支払い期日としておりました下記のご請求につきまして、本日時点で入金の確認が取れておりませんでした。行き違いでしたら大変恐縮です。
・ご請求書番号:No.____
・件名:__________
・ご請求金額:______円
・お支払い期日:○月○日
お手数ですが、お支払い状況をご確認いただけますと幸いです。すでにお手続き済みでしたら、本メールは行き違いとしてご容赦ください。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
ポイントは、「行き違いでしたら恐縮です」を必ず添えることです。相手が「あ、忘れてた」と気まずくならずに動けるようにする一言で、これがあるだけで返信が来やすくなります。請求書番号と金額を具体的に書くのも、相手がすぐ確認できるようにする配慮です。

段階2:反応がなければ「期日を切った正式な督促」
最初のリマインドから数日〜1週間ほど待っても入金も返信もない場合は、一段トーンを上げます。ここでは、新しい支払期日を明確に示すのがコツです。「お早めに」だと相手はいつでもよいと受け取ってしまうので、日付で区切ります。
件名:【再度のご連絡】○月分お支払いのお願い
○○株式会社 ○○様
お世話になっております。△△株式会社の□□です。
先日ご連絡いたしました下記のお支払いにつきまして、本日時点でも入金の確認が取れておりません。
・ご請求書番号:No.____/ご請求金額:______円
・当初のお支払い期日:○月○日
つきましては、誠に恐れ入りますが、○月○日(○)までにお振込みをお願いできますでしょうか。ご事情がある場合は、お支払い予定の見通しだけでもお知らせいただけますと助かります。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
このとき、電話も併用できると効果的です。メールは埋もれることがあるので、「メールでも送っていますが」と一本電話を入れると、相手の反応が早くなります。電話では感情的にならず、「入金の確認が取れておらず、念のためお電話しました」と事実だけを淡々と伝えれば十分です。
相手から「今月は資金繰りが厳しくて…」といった事情が出てきたら、頭ごなしに責めず、支払える見通し(分割・○日までに一部、など)を一緒に決めて、それをメールで残すようにします。口約束だけにしないのが、あとあとの安心につながります。
段階3:それでも動かないときの「書面」と、知っておきたい時効
正式な督促にも反応がなく、金額も無視できない大きさのときは、書面での請求に進みます。ここは、ひとりで抱え込まず、社長や顧問税理士・顧問弁護士に共有してから動くのが安全です。
内容証明郵便という選択肢
内容証明郵便(=「いつ・誰が・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれる郵便)で支払いを請求する方法があります。相手に「本気で回収する姿勢」が伝わり、これをきっかけに入金されることも少なくありません。文面は淡々と、請求金額・期日・振込先を明記します。
内容証明そのものに強制力はありませんが、後で法的手続きに進む場合の証拠になり、次の「時効」との関係でも意味を持ちます。
売掛金にも「時効」がある
見落とされがちですが、売掛金(代金債権)にも消滅時効があります。現在の民法では、原則として「権利を行使できることを知った時(通常は支払期日)から5年」で時効にかかり、請求できなくなる可能性があります。長く放置した売掛金ほど、回収が難しくなるということです。
時効が近い、あるいは相手が支払いを引き延ばしている——そんなときは、催告(内容証明郵便での請求など)によって時効の完成を一定期間先延ばしにできるしくみがあります。ただし、この期間や手続きは条件が細かいので、時効が絡みそうな場面では自己判断せず、必ず弁護士に相談してください。「まだ大丈夫だろう」と後回しにしないことが、いちばんのリスク対策です。
遅延損害金について:支払いが遅れた場合、契約で利率を定めていればその率で、定めがなければ法定利率(現行は年3%)で遅延損害金を請求できるのが原則です。少額なら請求しないことも多いですが、「本来は請求できる」ことは知っておくと、交渉のときに落ち着いていられます。
督促を「事務」にするための普段の備え
督促がつらいのは、多くの場合「準備ができていないまま、いきなり気まずい連絡をする」からです。普段から次を整えておくと、いざというとき淡々と動けます。
- 入金予定日を一覧で管理する:請求と入金の予定を支払・入金の管理表などで見える化し、期日超過がひと目で分かるようにしておく。
- 請求書の送付ルールを固定する:請求から入金確認までの流れを型にしておき、「送った・届いた」を毎回記録する。
- 文例をテンプレ化しておく:この記事の文例を自社用に少し直して保存しておけば、当日は宛名と金額を替えるだけ。心理的なハードルがぐっと下がります。
売掛金の督促チェックリスト
今日すべてをやる必要はありません。上から順に、できるところまでで大丈夫です。
- 連絡する前に(社内確認)
- 本当に未入金か、入金明細をもう一度見た(消し込み漏れ・名義違いがないか)
- 請求書が相手に届いているか、送信履歴を確認した
- 支払条件・締め日を勘違いしていないか確認した
- 段階1:やわらかいリマインド
- 期日+数日で、「行き違いでしたら恐縮です」の一言を添えて連絡した
- 請求書番号・金額・期日を具体的に書いた
- 段階2:正式な督促
- 「○月○日まで」と新しい期日を日付で切った
- 必要ならメール+電話を併用した
- 相手の支払い予定は、口約束にせずメールで残した
- 段階3:書面・時効
- 金額が大きい/反応がない場合は、社長・顧問へ共有した
- 内容証明郵便や時効・法的手続きが絡むときは弁護士に相談した
明日やること(まず1つだけ)
明日は、「入金予定日を過ぎている売掛金が今いくつあるか」を、リストで一度だけ確認してみてください。全部にすぐ連絡しなくて大丈夫です。まず、いちばん金額の大きい1件だけ、段階1のやわらかいリマインドを送ってみる。それだけで、止まっていた回収が動き出すことは珍しくありません。連絡の順番と文例さえ手元にあれば、督促はもう「怖い作業」ではなくなります。
最後に
督促は、誰にとっても気の重い仕事です。とくにひとりで経理を回していると、「強く言って関係を壊したくない」「でも回収しないと資金繰りが…」という板挟みを、相談できる相手もいないまま抱えがちですよね。

でも、「まず社内確認」「最初はやわらかく、少しずつ段階を上げる」「大きい金額から早めに動く」という順番さえ決めておけば、督促は感情でなく手順で進められます。あなたが今日この記事を読んで順番を確かめたこと自体、もう回収に向けた大事な一歩です。完璧でなくて大丈夫。いちばん気になる1件から、静かに一歩ずつ進めていきましょう。
本記事は一般的な実務情報です。督促・時効・法的手続きの取扱いは個別の事情や最新の法令によって異なります。金額の大きい未収金や、時効・法的手続きが絡む判断は、顧問弁護士・顧問税理士にご確認ください。
入金・回収まわりは、入金額が請求と合わないときの確認順 や 売掛金の消し込みを正確に行う手順、請求書の発行から入金確認までの基本フロー ともあわせて、記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。