会計ソフトの試算表を印刷した紙を手に、先月分と見比べながら数字を確かめているひとり経理の担当者

試算表の見方|ひとり経理が毎月ここだけ見れば安心の勘所

会計ソフトのボタンを押せば、試算表はすぐに出てきます。 でも、いざ画面いっぱいに並んだ数字を前にすると——「これ、どこを見ればいいんだろう」と、そのまま閉じてしまったことはありませんか。ひとりで経理を回していると、試算表は「出すもの」ではあっても「読むもの」になりにくい。それはとても自然なことです。

実は、試算表は隅から隅まで読み込む必要はありません。 毎月見るべきポイントは、たった数か所です。しかもその多くは「先月とくらべておかしくないか」を見るだけ。難しい会計の知識がなくても、比べることさえできれば、記帳のミスや計上漏れのサインに気づけます。

この記事では、試算表(合計残高試算表)の構造をやさしくほどいたうえで、毎月ここだけ見れば安心という5つのチェック点を整理します。今日は全部を理解しなくて大丈夫です。まずは「試算表は比べて見るもの」という感覚を、一緒につかんでいきましょう。

結論:試算表は、①現金・預金など「マイナスになってはいけない残高」がマイナスになっていないか、②貸借がゼロで合っているか(合計残高試算表なら借方合計=貸方合計)、③先月とくらべて大きく増減した科目はないか、④仮払金・仮受金など「一時置き」の科目が残っていないか、⑤見慣れない科目に思わぬ金額が入っていないか——この5点を見れば十分です。細かい数字の正しさより「異常のサインに気づけること」がゴールです。判断に迷う点は、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

そもそも試算表とは何か——「帳簿の健康診断表」

試算表とは、すべての勘定科目の残高を一覧にした表のことです。 仕訳を積み重ねていくと、各科目に残高がたまっていきます。それを「今、どの科目にいくら残っているか」の形でまとめたものが試算表です。会計ソフトなら、期間を指定してボタンひとつで出せます。

なぜこれを作るかというと、大きく2つの役割があるからです。

つまり試算表は、帳簿の健康診断表のようなものです。 数字を細かく味わう表ではなく、「どこかに異常が出ていないか」をざっと見るための表。そう思うと、少し気が楽になりませんか。

試算表の3つの型——まずは「合計残高試算表」だけでいい

合計残高試算表の構造を、資産・負債・純資産・費用・収益のブロックに分けて示した図
合計残高試算表は左(借方)と右(貸方)に分かれ、資産・費用は借方、負債・純資産・収益は貸方に残高が並ぶ。借方合計と貸方合計は必ず一致する

試算表には、大きく3つの型があります。名前だけ知っておけば十分です。

ひとり経理が毎月見るなら、合計残高試算表が一番使いやすいです。 「今月どれだけ動いたか(合計)」と「今いくら残っているか(残高)」の両方が1枚で分かるからです。会計ソフトでは、この形で出力されることが多いはずです。

表の見方の基本は、左が借方(かりかた)、右が貸方(かしかた)という並び。資産と費用は借方側に、負債・純資産・収益は貸方側に残高が来ます。ここは仕訳の借方・貸方と同じ考え方なので、仕訳に迷ったときの整理にもつながります。

毎月ここだけ見る——5つのチェック点

前置きが長くなりました。ここからが本題です。 試算表を出したら、上から順に次の5点だけ見てください。数字を全部読む必要はありません。

チェック1:マイナスになってはいけない残高が、マイナスになっていないか

まず最初に見るのは、現金と預金の残高です。 現金や普通預金がマイナスになることは、現実にはありません。手元や口座にある以上のお金は使えないからです。もし試算表で現金がマイナスになっていたら、それは「記帳漏れ」か「二重計上」か「金額の入力ミス」のサインです。

ここは、会計の知識がなくても「マイナスはおかしい」と直感で気づけるチェックです。まずここから見る習慣をつけると、大きなミスを早く拾えます。

チェック2:借方合計と貸方合計が一致しているか

合計残高試算表の一番下には、借方の合計と貸方の合計が出ています。 仕訳は必ず借方と貸方を同じ金額で入れるので、この2つの合計は必ず一致するはずです。会計ソフトを使っていれば自動で一致するので、ここがズレることは基本的にありません。

ただし、Excelで手作りしている場合や、仕訳を直接いじった場合には差が出ることがあります。もし一致していなければ、その月のどこかに片側だけの入力や金額違いがあるということ。まずはこの一致を、安心の土台として確認します。

チェック3:先月とくらべて、大きく増減した科目はないか

ここが試算表の一番のキモです。 今月の試算表を、先月の試算表と並べて見比べます。会計ソフトなら「前月比」や「月次推移」で並べて出せることが多いです。見るのは金額の正しさではなく、変化の大きさです。

大きく動いた科目を1つ見つけたら、「なぜ動いたか」を思い出してみます。理由が説明できれば問題なし。説明できなければ、記帳ミスの可能性があります。「異常に気づく」ことがゴールなので、原因が分かればそれで十分です。

チェック4:「一時置き」の科目が残っていないか

仮払金・仮受金・現金過不足などの一時的な科目に残高が残っていないかを確認するイメージ図
仮払金・仮受金・現金過不足・仮受消費税等は「一時的な仮置き」の科目。月末に残っていたら、精算や振替の漏れがないかを確認する

次に見るのは、一時的に使う「仮置き」の科目です。 これらは、後で正しい科目に振り替えたり精算したりする前提の科目なので、月末や決算に向けて残高が残っていると、処理の漏れになりやすいところです。

もちろん、月中の一時残高として残ること自体は普通です。ポイントは「中身が分からないまま放置していないか」。仮受金に見覚えのない金額が残っていたら、早めに調べておくと、決算のときに慌てずに済みます。

チェック5:見慣れない科目に、思わぬ金額が入っていないか

最後に、試算表全体をざっと上から下まで眺めて、普段は使わない科目に金額が入っていないかを見ます。

たとえば、いつも「消耗品費」で処理しているのに、今月だけ見慣れない科目に大きな金額が入っていたら、勘定科目の選び間違いかもしれません。あるいは、選択ミスで一部の取引が別の科目に紛れ込んでいることもあります。

これは、勘定科目の使い方が会社の中でブレていないかの点検にもなります。違和感のある科目を見つけたら、その中身(内訳)をたどって、意図どおりか確認しておきましょう。

「数字が読めない」と感じるときのコツ

試算表が苦手に感じる一番の理由は、「全部を理解しなきゃ」と思ってしまうことです。 でも、実務で毎月やることは、理解ではなく比較です。先月と今月を並べて、違うところに目を向ける。ただそれだけで、異常の8割は拾えます。

もうひとつのコツは、「おかしいところを1つ見つけたら、その日はそれで合格」にすること。全部を完璧に検算しようとすると、時間も気力も足りません。1つの違和感を追いかけて記帳ミスを直せたら、それは立派な月次のチェックです。

試算表は、月次決算の最後に全体を見渡すステップとも重なります。締めの手順そのものを整理したいときは、ひとり経理の月次決算チェックリストもあわせて見てみてください。

試算表チェックリスト

毎月、試算表を出したら上から順に確認するためのリストです。 コピーして、「○/要確認」を付けながら使ってください。会社に合わない項目は外して構いません。

基本の確認

先月との比較

一時科目の点検

科目の使い方

明日やること(まず1つだけ)

全部をいきなりやろうとしなくて大丈夫です。 明日やることは、今月と先月の試算表を2枚、並べて出してみるだけで十分です。

並べてみると、「あ、ここだけ増えてる」という科目が、自然と目に飛び込んできます。その1か所に気づけたら、試算表を「読む」第一歩はもう踏み出せています。理由が説明できれば安心、説明できなければミスのヒント——どちらに転んでも、あなたの帳簿は一歩きれいになります。

最後に

試算表は、誰かに褒められる書類ではありません。 それでも、会社の数字が正しく保たれているかを、静かに見張ってくれている大切な1枚です。ひとりでその番人を務めているのは、本当に簡単なことではありません。

試算表の確認を終えて、窓の外の明るい景色を見ながらほっと一息つくひとり経理の担当者

でも、見るポイントを5つに絞って、先月とくらべる。それを毎月くり返すだけで、試算表はいつのまにか「怖い表」から「頼れる味方」に変わっていきます。 今月、2枚を並べて1つの違いに気づけたなら、それで十分前に進んでいます。完璧を目指さなくて大丈夫。今日できたところまでで、あなたの経理はちゃんと前に進んでいます。

本記事は一般的な実務情報です。税務・会計の取扱いは個別の事情や最新の通達によって異なります。最終的な判断は、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

ほかの実務の手順も、記事一覧から少しずつ一緒に整理していきましょう。

関連用語